くらし 【特集】この地に生きる

棚田での農作業は平地に比べっと大変だよ。
人もだいぶ減っていづまで続げられっかも分がんねえし。
そんでもさ、この風景と仲間のごどが好ぎだがら
みんなでワイワイ楽しみながらやってんだ―。

皆さんは、農林水産大臣が認定する「つなぐ棚田遺産」をご存じでしょうか。津山町沢田地区では、一度は雑木が繁茂し、荒地となっていた棚田を地域を上げて復活。その取り組みが認められて認定されました。里山の風景を残していこうと、地域住民が手を取り合って取り組んでいます。

これまで、棚田を通じて、大学生のフィールドワークの受け入れや、体験農園などを実施。援農ボランティアとも協力して地域外の人と交流するなど、さまざまな方法を模索しながら、日々の活動に励んできました。
進学や就職などで登米市を離れたとしても、生まれ育った古里の景色というのは、どこに移り住んでも忘れることのない、かけがえのないものです。
地域から人が減っていく中で、農業の担い手不足がさらに深刻化していくことが心配されています。そんな状況の中、農地を活用し、古里の景色を守っていくために必要なことを考えます。

■懸念される遊休農地の増加
近年、農業従事者の高齢化や後継者不足により、全国的に遊休農地が増加しています。農林水産省の調査によると、令和5年度末時点での遊休農地は約10・2万ヘクタール。特に中山間地域ではその割合が高くなっています。管理をしなくなり農地が荒れると、景観の悪化だけでなく、害虫や有害鳥獣被害が増加する原因にもつながります。

■地域で守る沢田の棚田
古里の風景を守ろうと、地域ぐるみで活動しているのが、津山町沢田地区の有志で結成した沢田管理組合の皆さんです。将来に向けた農業生産活動の継続を支援する中山間地域等直接支払交付金を活用し、平成12年からトウモロコシなどを栽培。地域住民が一体となって、棚田を含む里山の美しい風景を守っています。
その取り組みが評価され、未来に残したい優れた棚田を農林水産大臣が認定する「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」に選ばれました。

■誰かの悩みの種が希望を育む地域の財産に
豊かな自然環境と里山の風景を守り続けている沢田地区。
沢田管理組合の皆さんに活動への思いを聞きました。

◇にぎやかで楽しくときには仕事の相談も
・阿部 辰也(たつや)さん
会長に誘われて、12年くらい前から参加しています。それまで農業は未経験だったので、自分にできるか分かりませんでしたし、実際やってみると斜面の草刈りとか大変なこともありましたが、にぎやかな人が多く、話しながら楽しく作業しています。
私はメンバーの中で一番若いですが、仕事の話とかも聞いてくれるので助かっています。何より、この棚田と風景を守りながら、大変なことやうれしいことを共感できる仲間ができたことが良かったです。

◇喜んでもらえることが継続のやりがいに
・片山 智子(ともこ)さん
この活動を通して、地区内の絆が強くなったと思います。作業するときに、行ける人たちで作業するというやり方なので、負担に感じることもありません。旅費の一部を収益から補助してもらって、みんなで旅行しているので、それも楽しみの一つですね。
トウモロコシは、厳しい暑さの日に作業することもありますが、私たちが作ったトウモロコシを食べて「甘くておいしかった」と喜んでもらえるのがうれしいので、これからも続けていきたいです。

■仲間と同じ目標を持ってまずは「やる気」を植えるんだ
・沢田管理組合 会長阿部 彰(あきら)さん
この棚田とか里山のことを「美しい自然の風景」と言う人がいますが、先人たちが切り開いて残してくれた守るべき財産なんです。
一度は荒地となりましたが、県の農業改良普及センターから指導をもらいながら、みんなで協力して復活させることができました。農地を活用して収入につなげることも大切ですが、仲間たちと同じ目標に向かって楽しく過ごす時間そのものが宝物だと思います。
この活動を通じ、農地を「誰かの遊休農地」ではなく「地域みんなの財産」と捉えて活用することが、持続可能な農業と里山の風景を未来へつないでいく第一歩になると感じました。
未来をどう生きるかは自分次第。農地を活用し、地域を元気にするためには、小さな幸せや喜びを共感できて、いつも笑顔でいられるようになる方法を地域のみんなで考えること。そして、まずは自分たちに「やる気」を植えることが大切なんだと思います。

■農地の価値を生かして地域の活性化に
・宮城県登米農業改良普及センター 木村 優太(ゆうた)さん
農地は、農作物の生産だけでなく、自然環境の保全など、さまざまな機能を持っています。また、農村文化の伝承や都市との交流の創出にもつながるほか、ライフスタイルの変化を求めて移住する例もあるので、地域振興の面でも価値があります。
農業の担い手が減少し、遊休農地の増加が懸念されていますが、地域一丸となって農地を活用し、農村地域の活性化につながる取り組みが増えていくことを願っています。

問合せ:
・遊休農地に関すること…農業委員会事務局(農地管理係)【電話】0220-34-2317
・中山間地域等直接支払交付金に関すること…産業経済部農林振興課(農村環境係)【電話】0220-34-2709