くらし 【特集】伊豆沼・内沼ラムサール条約登録40周年 共生style(3)

伊豆沼・内沼は、人のなりわいと共に長い年月を歩んできました。また、今も時代と共に形を変えながら、私たちに恵みを与えてくれます。沼の恵みを生かしながら農業や観光に取り組む2人に話を伺いました。

■Interview
伊豆沼レンコン育成協議会
会長 佐藤 優 さん(若柳米ヶ浦1)

◇大雨が生んだ北限のレンコン産地
歯ざわりの良い食感、口の中に広がるほのかな甘味。これが伊豆沼レンコンの特徴です。このレンコンは、伊豆沼にほど近い食用レンコン専用の田んぼで生産しています。
伊豆沼レンコンの歴史は、今から43年前の昭和57年にさかのぼります。きっかけは、夏の観光資源である伊豆沼に自生するハスが大雨で水没し、全滅したことです。ハスの地下に埋まった茎がレンコンに当たります。そこで、伊豆沼のハスを復活させ、同時に食用レンコンの生産を普及させようと、茨木県土浦市からレンコンの種と生産技術を導入し、栽培を始めました。
また、伊豆沼・内沼でハスが自生するほど、この沼の周辺は、レンコンの栽培に適していることもあり、市は北限のレンコン産地と言われています。収穫時期の秋から冬の間は寒さも厳しく、1月の平均気温は氷点下を下回るほど。レンコン自体も凍らないように糖度を増すため、甘く身のしまったシャキシャキのレンコンが育ちます。

◇地域の特産品に成長
伊豆沼レンコンを年間120トンほど出荷し、県内でも知られる地域の特産品に成長しています。
最近では、新たにレンコン生産を始めた人もおり、協議会では、生産のノウハウを1年かけて指導し、生産者を増やす取り組みもしています。これからも、生産者が増えることを願っています。
そして、北限のレンコン産地だからこそできる伊豆沼レンコンを、これからもこの地に根付かせていきたいです。

■Interview
一般社団法人くりはらツーリズムネットワーク
代表理事 大場 寿樹 さん(築館高森)

◆ワイズユースで取り組む共生スタイル
◇ワイズユースで共生する
ワイズユースは、湿地の生態系を維持しながら、そこから得られる恵みを持続的に利用することを言い、ラムサール条約が推奨する取り組みの1つになっています。
沼周辺の人間の暮らしと渡り鳥の関係はまさにワイズユースと呼べるもの。伊豆沼・内沼周辺の田んぼの一部は、沼を干拓して田んぼにしています。渡り鳥は沼をねぐらに、周辺の田んぼの落穂を餌にしています。沼と餌場となる田んぼがあることで渡り鳥が飛来するのです。人間が自らの暮らしのために沼を利用して米づくりをした結果、渡り鳥や他の生物にとっても良い環境になっています。共生のあり方として、この関係性にとても価値があると感じます。
古くは菅笠や漁業、現代で言えば伊豆沼レンコンなどの農業は、ワイズユースと言える取り組みです。また、自然へのインパクトを最小限にすれば観光もワイズユースと言えます。沼周辺を舞台に体験プログラムを実践している当団体もワイズユースを心掛けています。自然との関係をより良く保ち、次世代につなげていきたいです。