- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県栗原市
- 広報紙名 : 広報くりはら 令和7年8月号
■Interview 伊豆沼・内沼は多様な生物の宝庫。地域の宝であり、世界の宝。
公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
研究室長 嶋田 哲郎 さん
◆一度崩れた生態系の回復にはたくさんの人の力と長い時間が必要
人のなりわいと共に歩んできた伊豆沼・内沼。ラムサール条約の登録以降、人の生活や沼の環境も変化しています。
沼の保全に取り組む、公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団を取材しました。
◇生活の変化と財団の役割
伊豆沼・内沼は、昔から人のなりわいがあり、自然環境のバランスが保たれてきました。ヨシを刈って暮らしに利用する、漁をするなど、人が沼の資源をうまく利用し、沼の自然資源の好循環を促してきました。つまり、人が良い方向に手を入れていく「保全」が必要な沼なのです。
現在は、人の生活が変化し、沼のヨシは利用されていません。そのため、ヨシの堆積を防ぎ、沼の陸地化を防ぐため、これまで人がなりわいとしてきた営みに代わり、財団や土地改良区などで野焼きを行い、沼の保全を継続的に行っています。
また、昔は貴重なタンパク源として好まれた沼の魚も、今ではスーパーなどで簡単に海の魚が買えることもあり、沼の漁業自体もほそぼそとした状況に変化しています。
その他、難しい課題にも直面しています。それは、伊豆沼・内沼の水質悪化です。
原因は、複合的ですが、要因の1つにハスが挙げられます。ハスが枯れると沼に泥として蓄積し、水質を悪化させます。また、ハスが群生することで水中の酸素濃度が大幅に低下し、魚の窒息が心配されます。そこで財団では、夏の観光の目玉であるハスを鑑賞する遊覧船の運行ルートを避け、運行する伊豆沼漁協と折り合いを付けながら、ハスの刈り取りを行っています。
◇市民と共に守る生態系
沼は多様な生物の宝庫です。鳥類は国内に飛来する約4割がこの沼で記録され、特にマガンは日本に飛来する9割に当たる約10万羽が伊豆沼・内沼周辺で越冬します。また、魚は、コイ科を中心に絶滅危惧種を含め約40種類が生息しています。その他、トンボやチョウなど昆虫類も多く、貴重な自然環境が保たれています。まさに地域と世界の宝です。
しかし、25年ほど前、沼の魚類に急激な変化が現れます。外来魚のブラックバスが爆発的に増加し、在来魚がこれに食べられ激減したのです。
そこで、財団では、バス・バスターズを結成し、漁協や市民、学生などと一緒にブラックバスを減らす取り組みを平成16年に開始しました。
これまでの間、延べ約4千人に協力をもらい、ブラックバスの繁殖抑制や捕獲を続けています。
取り組みを始めた頃、定置網で捕まる魚は、ほとんどがブラックバスでした。それを見たとき、駆除に当たる誰もが以前のように回復させることは、とても無理だと思いました。それでも、何としても以前のような状況に戻したいと使命感を持って続けてきました。その結果、絶滅危惧種のゼニタナゴやモツゴなどの在来魚が復活し、ブラックバスがほとんど見られない状況にまで回復できました。
日頃の研究を基に根拠を持ってしっかりと努力をすれば、自然はそれに応えてくれる。自然環境は一度崩れると、戻すのには長い時間がかかることを実感しています。
沼ではこれまで、たくさんの人の努力や関わり、思いが土台にあって、環境の保全が進められてきました。多くの人の協力があってこその保全。これからも、保全と研究の両輪を大切に、この伊豆沼・内沼を次世代へ伝えていきたいです。
■伊豆沼・内沼の魅力を知る
伊豆沼・内沼のほとりには、沼の貴重な自然環境や観察できる鳥や昆虫、魚などを学べる3つのお薦めスポットがあります。
◇宮城県伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター
場所:若柳字上畑岡敷味17-2
問合せ:宮城県伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター
【電話】33-2216
◇栗原市サンクチュアリセンターつきだて館(昆虫館)
場所:築館字横須賀養田20-1
問合せ:栗原市サンクチュアリセンターつきだて館
【電話】22-7151
◇登米市伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター(淡水魚館)
場所:登米市迫町新田字新前沼254
問合せ:登米市伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター
【電話】0220-28-3111
◇3館共通事項
開館日時:火曜日~日曜日、祝日 午前9時~午後4時30分
休館日:
・毎週月曜日、祝日の翌日
※月曜日が祝日の場合は、その翌日が休館。
・年末(12月29日~31日)
入館料:無料
※詳しくは、ウェブサイトを確認するか、問い合わせください。