くらし 【特集】ジオが描く未来の栗原(1)

豊かな大地が広がる栗原。この地で暮らしてきた先人たちは自然からの恩恵を受け、そして時に自然の厳しさに向き合いながら知恵と工夫を重ね、独自の文化や災害への教訓を伝えてきました。
栗駒山麓ジオパークでは、こうして受け継がれてきた栗原を未来に残すため、さまざまな活動をしています。
今月は、日本ジオパーク認定10周年を迎える、栗駒山麓ジオパークのこれまでの歩みとこれからを特集します。

◆ジオパークとは
地球誕生の歴史、地域の地質や自然が人々の暮らしや文化に、どのように関わっているかを過去から学び、楽しみながら未来を考える場所です。大地の成り立ちを物語る地質や自然を保全し、教育や防災、地域活性化に活用することで、持続可能な地域を目指します。

◆日本にあるジオパーク
日本ジオパークは全国に47地域あります。その内、静岡県の伊豆半島など10地域が、ユネスコ世界ジオパークにも認定されています。

◆ユネスコ世界ジオパーク
国際的に見て貴重な地質などを含む地域を保全し、教育や観光などに活用して持続可能な開発を目的にしたものです。2015年からユネスコの正式なプログラムとなり、現在世界50カ国229カ所が認定されています。

◆栗駒山麓ジオパークのあゆみ
平成20年6月14日
平成20年岩手・宮城内陸地震 発生
22年5月24日
栗駒山麓崩落地・景観活用検討委員会設立
23年6月1日
栗駒山麓崩落地・景観活用将来ビジョンを提言
24年2月 ジオパーク宣言
27年9月4日
日本ジオパーク認定、栗駒山麓ジオパーク誕生
31年4月1日
栗駒山麓ジオパークビジターセンター開設

令和元年12月25日
日本ジオパークネットワーク再認定
6年9月5日 NIPPON防災資産に認定
7年9月4日
栗駒山麓ジオパーク認定10周年

栗駒山麓ジオパーク推進アドバイザーを努める、東北学院大学名誉教授の宮城さんに話を伺いました。

理学博士・東北学院大学
名誉教授 宮城 豊彦 さん
◆自然災害と生きる
栗駒山麓ジオパークには栗駒山をはじめ、そこから流れる迫川、平野に広がる田園地帯や伊豆沼・内沼などの多様な自然の他に、さまざまな自然災害を克服して築かれた文化があります。こうした自然や文化が評価され、市全域が日本ジオパークとして認定されています。
市では、平成20年岩手・宮城内陸地震をきっかけに、栗原の自然や文化などを守りながら、教育や防災、観光に活用して持続可能な地域を目指すため、ジオパークの構想が始まりました。
本ジオパークが持つ他にはない魅力の1つに、自然災害との知恵ある共生が挙げられます。自然災害では負の側面が注目されることが多いですが、土地が豊かになるという正の側面もあります。
例えば、栗原の地は古くから河川の氾濫による被害を受けてきましたが、氾濫によって土砂が運ばれ、豊かな大地ができました。江戸時代からは、河川改修などの整備が進み、多くの米が生産され農民の暮らしを支えました。市内に数多く残る長屋門は、豊かな農民がいた証です。

◆防災教育の先進地
本ジオパークでは保護・保全部会、防災・教育部会、観光・ツーリズム部会、ガイド部会の4つの部会を中心に活動しています。特に防災・教育部会では、子どもたちが地域の成り立ちや防災を学ぶジオパーク学習に力を入れ、今では市外の学校からも多く学習に来ています。
また現在、本ジオパークビジターセンター内に荒砥沢地すべり地から採取した地層や、日本、世界各地の岩石標本の展示室を準備しています。展示物の一部は触れることができ、手で重さや触り心地などの情報を感じ取り、楽しく学べる工夫をしています。

◆世界を見据えて
本ジオパークでは、受け継がれてきた栗原の魅力を、より多くの人に伝えるためユネスコ世界ジオパークの認定を目指しています。それには、住んでいる人たちが地域の魅力を知り発信することが大切です。
魅力は普段の生活の中にあります。いつも口にしているおいしい米ひとつ取っても、この地が育んだかけがえのない恵みです。世界に栗原の魅力を届けるため、もっと多くの人にジオパークの活動を知ってもらいたいです。