イベント 【特集】菖蒲田海水浴場オープン(2)

[一般社団法人七ヶ浜町観光協会 会長 我妻典夫(わがつまのりお)さん(汐南)]

◆海は憧れでした。でも海離れが深刻
私は、古川市(現在は大崎市)出身ですので、内陸に住んでいた私にとって海は憧れでした。
子どもの頃、海水浴といえば、だいたい菖蒲田か、野蒜(のびる、東松島市)でした。小学5年生の時に、友だちと自転車で野蒜に向かう途中の遠くの山の間から、海が見えた瞬間、ものすごく感動したことを覚えています。
あの頃は、家にエアコンがない時代で多くの人が海に涼みに行きました。それこそ、海は芋の子を洗うようなにぎわいでした。
菖蒲田海水浴場には海の家が10軒ほど並び、海水浴をしながら、畳やござが敷かれた部屋で涼んでいました。近年は、屋内プールやスーパーの遊具施設、映画館などの娯楽施設も増えて、レジャーが多様化し、涼しい場所で快適に過ごしたいという人が増えてきたと思います。夏のレジャーも変わり、海が娯楽の一つではなくなったのかもしれませんね。砂浜での海の家もなくなり、菖蒲田海水浴場には涼む場所や日陰もなくなりましたね。どこの海水浴場も海離れが深刻になってきています。

◎39年前の昭和61年の菖蒲田海水浴場。かつて数十万人だった海水浴客は、近年、数万人ほどに
※詳しくは広報紙P.4をご覧ください。

◆ブルーフラッグの旗のもと、より安全・安心に
震災後に海水浴場が再開し、8年になりますが、おかげさまでこれまで無事故を継続しています。
私たちは、第三者機関にお墨付きをいただくことが、海水浴に来る方の安全・安心にもつながると考え、2023年にブルーフラッグの認証を取得しました。
ブルーフラッグは、国際的に認められた認証制度ですが、日本で認証された海水浴場は12カ所のみです。菖蒲田海水浴場は、東北初、全国では8番目に認証されました。
認証されるには水質や安全管理、障害者にもやさしい、教育をきちんとしているなど、33の厳しい審査項目をすべてクリアしなければなりません。
今は、海水浴場のスタッフ約60名が、ブルーフラッグを誇りに思い、この旗印のもと一丸となって、海開きに向けて取り組んでいるところです。
ブルーフラッグの認証にあたっては、迅速に救助できる体制づくりに力を入れ、洋上からも監視するためのマリンジェット、危険な行為をする方には空から注意喚起するためのスピーカー付のドローンを配備しました。
障害者の方には、大型のシャワールームや車椅子に乗ったまま海まで行くためのカーペットを揃えました。
万一の事故の際、救急車が到着するまでには、約10分かかるといわれています。心肺蘇生とか、何かしらの処置をすることにより生存率が上がることから、私たちはこの10分が勝負と捉え、本部員は1日、監視員には2日間の講習を義務づけました。スタッフ全員がAED(心停止の人を救命する医療機器)の操作と避難場所へのルートを実際に歩いて確認しています。
海の安全を確保するために溺れた人を助けるライフセイバーの資格はとても重要ですが、75歳のスタッフが先日の試験に見事合格しました。
また、海には入りませんが、海辺での救助活動に携わるウォーターセーフティー・心肺蘇生の資格については、今年4月に開催された講習会に、なんと16名が自費で挑戦し、資格を取得しました。このようにスタッフの意識はとても高いですね。
海でのアクシデントへの対応力も各段に上がるものと思います。
今、全国で海水浴場の閉鎖が相次いでいる理由の一つには、安全を維持するためのスタッフの費用が大きく、採算性を考えると閉鎖せざるを得ないという実情もあるようです。

◆オアシス化プロジェクト 始動!
これからは「行きたい」と思わせる海水浴場をきちんと作っていかないと、との強い思いがあります。
このために、私たちはまず、海の「安全・安心」を確保するためにブルーフラッグの認証を取得しました。そして、次の段階として今年、菖蒲田海水浴場の「快適さ」を作っていこうと「オアシス化プロジェクト」を始めました。
このプロジェクトを推進するために、5月17日から6月30日までの期間に、皆さんから資金のご支援を募るクラウドファンディングを実施しました。この夏、菖蒲田海水浴場が取り組むプロジェクトは、まず、涼しさの演出です。猛暑の時は、やはり涼しさですよね。よしずで30mの日陰をつくります。できれば流木でドームも作りたいですね。砂浜にはヤシの木を置き、潮騒と風鈴の音が響くリラックスした空間を演出したいと思っています。次に、楽しさの演出です。海に来る親子が、波打ち際だけではなく、日陰で水遊びできるプールやブランコ、水鉄砲で遊べるキッズエリア。ポケモン・ラプラスの浮き輪なども置いて写真映えスポットやビーチバレーやドッグランができるエリアもつくります。
菖蒲田海水浴場をPRするマスコットキャラクターの「しおぶたくん」も作りました。今後はどんどんPRに活用して、グッズの展開もしていきます。
七ヶ浜の海を夏だけでなく通年来たくなるように、もっともっと楽しい場所にしたいですね。