くらし 法の広場

■家族の問題なのか
僕がこのコラムを担当するのは、今回で最後です。赴任当初、相続放棄の相談は、誰かが亡くなってからしか来なかったのですが、最近は亡くなる前に相談に来る方も多いです。もし、このコラムがお役に立てていたのであれば、うれしいです。
早めの相談という意味で、今回は家族に関わることを書いてみます。まず、憲法では、「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に立脚して、家族のことを決めなさいと書いてあります。戦前の封建的な家父長制ではなく、ひとりひとりの家族が、平等で幸せであることを目指しています。
他方で、家族でまず問題を解決しなさい、とは書いていません。
だから、家族の中で問題が起こったら、早めに誰かに相談していいのですが、現実には、かなりこじれてからの相談が多いです。結婚、出産、子育て、学校、就職、退職、老後で、その都度出てくる家族の問題を、そのとき相談できずに、何十年も引きずる例は多いです。その原因を考えてみると、「身内の恥」と思って誰かに相談するのを躊躇(ちゅうちょ)したり、せっかく相談したのに「それは家庭で解決する問題でしょ」と冷たく追い返されたり、はたまた、家族の闇を隠すために、「これは家族で解決する」と援助を断ったり。
自己責任とか自助共助公助と言われると、家族のことで、行政や社会を頼ってはいけないような気もしてきます。もちろん家族は大事。皆で協力している家族は素敵です。
でも、いい家族かどうかは、運や偶然に左右されている面も大きいと思います。その運や偶然を、家族だけでなく、社会全体で分かち合えればと思うのですが、これは僕の永遠のテーマです。
鹿角での3年間、たくさんのご依頼とご協力をいただき、生きて来た中で一番幸せでした。ありがとうございました。I shall return.

志賀貴光(たかみつ)弁護士
法テラス鹿角法律事務所
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