- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県福島市
- 広報紙名 : ふくしま市政だより 令和7年7月号
■第82回「土湯こけし」
三日月眉に切れ長なクジラ目、丸いたれ鼻におちょぼ口。その愛らしい表情に見つめられていると、やさしい気持ちになってきます。
土湯こけしの製作技術が、今年3月、福島市無形民俗文化財に指定されました。こけしの製4作技術444が文化財となるのは日本初とか。江戸時代、木地師(きじし)たちが炭焼きや木工品づくりの傍ら遊び心で始めたこけしづくり。高い芸術性をも生み出す製作技術に磨き上げてきた工人の皆さんに敬意を表します。
土湯こけしの特徴といえば、冒頭の顔の描き方に加えて、胴体にはろくろ模様、頭部には蛇の目模様とカセと呼ばれる赤い髪飾りが描かれます。ろくろの回転で生じる熱を利用して、頭部を胴にはめ込み、首が回り「キィキィ」と鳴くのも土湯こけしならではです。
6月の土湯こけし祭りで3人の工人がデビュー。今後も新たな工人誕生が見込まれ、一時は5人にまで減少した工人の確保に将来的な道筋がつきつつあります。
しかし、安定して土湯こけしを引き継いでいくためには、伝統を守りながらも、時代のニーズを反映した革新が必要です。だるまでは、女子大生起業家が考案したポップでカラフルなだるまが外国人に爆売れしているとのこと。土湯こけしも、絵具に金銀を練りこんだり、胴体を中空にして中からライトアップしたり、「ほほえみがえし」を考案したりと、積極的に革新を取り入れてきました。今後もさらなる革新的展開を期待します。
一方で、こけしが売れなければ、工人は続けられませんし、後継者も参入できません。まちづくりやお土産などで土湯こけしを買い支えていくことが必要です。土湯の温泉街には、こけしのモニュメントや道標などが設置されていますが、改修中の早乙女橋には、新たなシンボルとなるこけしの欄干(らんかん)を設ける予定です。
また、市では、オリンピックをはじめ国内外の交流に、土湯こけしを活用し、喜んでいただきました。これからも、相手の文化を取り入れたオリジナルこけし(工人にはご苦労をおかけしますが)などで双方の友好を深めていきたいと思います。
土湯こけしの微笑みで、私たちの心と社会がほんわりと明るくなることを願っています。
福島市長 木幡 浩(こはたひろし)