くらし [特集2]よみがえる学び舎、つながる地域

■いわきの「廃校」のいま
平成26年に田人第二小学校が廃校となったのをかわきりに、この10年あまりで幼稚園8園、小学校18校、中学校10校の合わせて36校が廃校を余儀なくされました。
また、子どもの数で見ると、この15年で、約17,000人減少しており、35人学級で換算すると約494クラス分にものぼります。
長年にわたって地域の象徴的な存在だった学び舎。この資源を利活用し、地域の活性化につなげていくさまざまな挑戦が始まっています。

子どもの数と廃校延べ数の推移

■「廃校」から始まる物語
現在、民間事業者によって9校が新たに生まれ変わっています。旧永井小学校は、地域の憩いの場として、孤立を防ぐ新たな賑わいの場の創出につながっています。
旧好間第三小学校は、児童クラブとして、廃校後も変わらず子どもたちの賑やかな声であふれ、地域の活性化を図っています。
旧永戸小学校では、ロボット技術等のソフトウェア開発の拠点として、さまざまな研究開発などが進められています。このほかにも製造業や福祉事業など、活用の方法はさまざまです。
学び舎としての役目を果たした今、廃校の再生によって、地域の活性化や雇用創出といった新たな価値の創出に加え、地域の歴史や文化を次世代へつないでいます。
単なる施設の有効活用ではなく、民間事業者の思いと地域の活力がつながる物語。
廃校から始まる新たな人づくりとモノづくりが、地域の未来をこれからも照らしていきます。

■旧白水小学校→職人育成塾ふくしま
平成31年3月をもって廃校となった旧白水小学校は、明治31年に炭鉱の私塾として開校して以来、白水地区の地域コミュニティを支えてきました。現在は「(一社)職人育成塾ふくしま」が、建設業分野における人材確保・技術継承のための職業訓練所を運営しています。現在、第3期生を募集しています。

◇(一社)職人育成塾ふくしま
住所:内郷白水町川平76
【電話】88-1116

◇自分の強みを見つけてほしい
塾長 坂本 幸司さん
高校の教員として38年間勤め上げ、この4月から塾長をしています。
教員生活では、どんな学生でも適性があることを実感しました。学校生活になじめず挫折を経験しても、今では立派に務めを果たしている教え子がいます。そんな経験から、リスタートする人を応援するこのプロジェクトに強く共感し、私のセカンドキャリアとして取り組んでいます。
建設業は、携わった仕事が何十年も形に残る誇り高い仕事です。旧白水小学校もその一つです。目の前に木造建築の素晴らしい見本があり、訓練生の皆さんも日々刺激を受けています。
卒塾生が、建設業に進み、ここで出会った先輩らと現場を共にする。そんな未来を楽しみにしています。

■旧四倉第四幼稚園→はたらくデイサービス大野
令和2年に廃園となった旧四倉第四幼稚園に誕生した「はたらくデイサービス大野」は、高齢者が役割を持ち就労体験を通じて社会参加できる大野地区唯一の介護施設です。「誰かの役に立つ」実感から生きがいや自己肯定感を育み、身体のケアだけでなく心の健康や社会とのつながりも支援しています。

◇(株)ウェルビーイングいわき
住所:四倉町駒込字広畑20-2
【電話】38-9580

◇地域と共に歩む、介護のかたち
管理者 遠藤 丈志さん
長年、介護の現場で利用者と向き合う中で感じたのは、利用者自身が主体的に動ける環境づくりこそが重要だということ。また、地元である「大野」の名がつく施設が次々と姿を消すなか、旧四倉第四幼稚園で、思い描く理想と地元に貢献したいという思いからこの施設を開設しました。
「介護される側も地域の一員に」。地域とつながり、共に暮らしを作る。それが私たちの考える「地域と共に歩む、介護のかたち」です。
かつてのように、人が集まり、にぎわいのある「大野のシンボル」へ。この場所が、介護だけでなく、地域福祉の新しい拠点になることを目指しています。