文化 おしえて博物館-七十三-

時下の『夏休の友』

夏休みの友といえば、読書感想文や自由研究などとともに、小中学生の夏休みの宿題として知られています。
毎日、日付と曜日、その日の天気を書き、1から2ページずつ問題を解いて、夏休み明けに学校に提出するものです。中には、毎日はやらず、数日分や数週間分、あるいは夏休みの最終日にまとめて問題を解き、最後に、天気をどうしようと悩んだ経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
写真は昭和15(1940)年当時、市内の小学校で実際に使われていた小学4年生用の『夏休の友』です。
昭和15年は、日独伊三国軍事同盟が結ばれた年で、翌年には太平洋戦争が起こりました。戦時体制が強められ、生活の全てが戦争のために制限されていた時代です。
この『夏休の友』を詳しく読むと、戦争が子どもの日常生活にどれほど身近だったのかを知ることができます。
例えば、漢字の読み仮名を付ける問題では「勅命」「軍務」「征伐」「忠義」などの漢字が並んでいます。また、熟語を作る問題では、児童は、「営」という一字に対して、兵士が軍隊に入ることを意味する「入営」という熟語を書いています。
そして、鉄くずを拾い集めて売ったお金を献金して先生に褒められたという児童の作文が読み物として掲載されています。このお金は戦費とするために学校で募集されていたようです。
このように、夏休みの宿題が戦争を意識した内容となっていることが分かります。そして、戦争を想起させる熟語をこの児童が書いていることからも、教育が子どもに与える影響の大きさを感じることができます。
市博物館では、令和7(2025)年の終戦80年を機に、企画展「近代の戦争と南相馬」を開催しています。この機会に、ぜひ市博物館まで足をお運びください。

問合せ:市博物館
【電話】23-6421