- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県南相馬市
- 広報紙名 : 広報みなみそうま 2025年11月1日号
『籾ようしの道具アオとフリウチ』
今回は博物館の収蔵庫から、米作りに関わる昔の道具を紹介します。
現代では、稲刈りの後に脱穀と籾(もみ)すり、そして精米という流れでお米を食べられるようにする工程が進められていきますが、昔は他にも必要な工程がありました。その一つが、この辺りでは「籾ようし」といっていた脱芒(だつぼう)の作業です。
大正時代以前の籾には「ノゲ(芒・のぎ)」と呼ばれる細長い穂先がついていました。ノゲはイネの品種改良が進んだことで、今ではあまり見られません。籾にノゲがついたままだと籾すりがうまくできないため、ノゲを除去(脱芒・だつぼう)する籾ようしが必要でした。
籾ようしをする際、当地域でもっぱら使われていた道具は槌(つち)状の「アオ」というものです。ノゲ付きの籾を筵(むしろ)に広げ、数人で調子を合わせアオで叩き合うことで、ノゲを籾から分離しました。
アオを使う地域は、会津地方を除く福島県や宮城県、岩手県などに広がっています。会津地方でもアオに似た道具はありましたが、根曲がりの自然木をそのまま道具にした「籾打ち棒」がより多く使われていました。
本市周辺では、アオの他にも、あまり多くはありませんでしたが、麦打ち(麦の脱粒(だつりゅう)・脱芒)用の「フリウチ」という道具を籾ようしに使うことがありました。長い柄と短い棒状の部分が連結された構造で、短い部分が回転して籾を打つようになっています。
こうした回転する打撃部を持つ道具は、関東では「クルリボウ」と呼ばれ、ありふれたものでしたが、東北ではあまり普及していなかったようです。
アオやフリウチの分布の違いは、生活の中で使われてきた道具の一つ一つに地域性が秘められていることを教えてくれます。
問合せ:市博物館
【電話】23-6421
