- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県三春町
- 広報紙名 : 広報みはる 令和7年11月号
■田村郡役所
三春町役場向かいの南町高齢者住宅のところには、かつて「田村郡役所」という機関がありました。郡役所は「郡区町村編制法」という法律に基づき、明治12年に設置され、旧田村郡一円を大正12年まで管轄していました。今では想像もつきませんが、かつて郡役所は県の下に存在し、各市町村の指導監督にあたっていました。郡役所の要請のもと、連合町村会が作られ、道路の改修や開削はそこで協議されました。工事においては郡役所が一切の事務をとりしきり、施行監督も郡役所が行います。また、地方産業の振興・奨励、教育政策の推進、衆議院・県会議員選挙なども郡役所の重要な仕事であったため、郡長の権限は非常に強く、「郡長様」は県からやってくる権力者で、一般の人々からは畏敬の念をもって見られていたようです。
明治22年の町村合併の場合には、町村や一般の人々の意向はさておき、市町村制発足にともなう新たな行政区画の編成ということもあり、秘密裏に合併調査が進められました。「三百戸ないし五百戸相当」ぐらいの村々を編成するため、多少は強引でもかまわないという考え方のもと、その推進主体となったのが郡役所でした。
村や町は、長い年月をかけ、共同体として成り立ってきたものです。いったんそれをばらばらに解きほぐし、新しい自治体として成立させるというのは、内部の事情を知るものには難しいことだったでしょう。三春にも、田村郡にもルーツを持たない郡長がその任にあたったことにより、成し遂げられた作業だったと言えるかもしれません。
