- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県双葉町
- 広報紙名 : 広報ふたば 2025年2月 災害版 No.165
■齊藤(さいとう) あづさん(新山)
居住先:宮城県仙台市
▽通うことがなかった「自宅前の南小」
自宅は双葉南小学校の向かい側(南側)にあり震災があった日の朝、小学生が登校する姿を見て「私も間もなくランドセルを背負って通うんだ」と思っていました。避難後、何度か一時立入りしましたが、南小の校舎を目にする度に、間近に控えた小学校入学を楽しみにしていた頃が思い出されます。
▽「社会科室での暮らし」と「故郷の自覚」
私の一家は町の集団避難で移動したため、さいたまスーパーアリーナから旧騎西高校に移りました。今、大人の立場で考えれば、プライバシーをはじめ極限状態の生活環境でしたが、家族で身を寄せた社会科室での生活は、仲が良い友だちが一緒だったこともあり、精神的な緊張が和らぐなど、当時の「子ども目線」では、悪いことばかりではない日々を送れたのかもしれません。
加須市内の小学校で新入生としてのスタートを切りましたが、双葉町立小学校の先生方が併任として勤務していたため、上級生を含め孤独にならず現地に馴染みながら「双葉町の子ども」としての自覚を持ち続けることができたと思います。
また、「集まれふたばっ子」や「生徒海外派遣事業」など、子どもたちを対象とした町主催行事等にも参加しました。特に、海外派遣事業では、ニュージーランドでホームステイや現地生徒との交流などを通して見聞を広め、将来への希望を持ち続けることの大切さを実感しました。全町避難で大変な中、貴重な機会を頂戴でき、感謝の気持ちでいっぱいです。
▽進路選択の端緒は「怪我」
中学卒業に合わせて親類が住む仙台市に転居し、高校に入学して新しい土地での生活が始まってしばらくした頃、交通事故で口の中から手術を受けるほどの大けがを負いました。
幸い日常生活には支障がないほど回復となりましたが、それまで、呼吸・食事・会話など当たり前に思っていた口腔機能の大切さを痛感し、健康の維持に「口腔ケア」が重要なことについて関心を持つようになりました。そうしたきっかけもあり、卒業後は専門学校に進み、歯科衛生士を目指して勉強しています。近年、特に高齢被災者の健康維持のため、歯科衛生士が活躍することが増えており、将来、災害時の支援活動に生かせればと思っています。
▽住むところは違っても
子どもの頃から双葉町を離れて生活しても、思いを寄せ続け絆は絶やしたくないという気持ちに変わりなく、昨年は「ふるさとを、見ようプロジェクト」に参加、先月は、ダルマ市でにぎやかな中行われた「はたちを祝う会」には祖父母を含め家族で会場に赴き、故郷で大人としての自覚を新たにしました。