- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県双葉町
- 広報紙名 : 広報ふたば 2025年4月 災害版 No.167
■双葉町を忘れない
平成23年3月11日に発生した東日本大震災、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故により、私たち双葉町民はふるさと双葉町を離れ、今もなお全国に分かれて避難生活を送っています。
先の見えない不安な生活の中で、町民の皆さんが毎日をどのような思いで過ごし、ふるさと双葉町への思いを抱き続けているのかを、皆さんの声をお聴きしながら「ふるさと絆通信」として連載しています。
そして「ふるさと絆通信」を通して、皆さんの双葉町への思いと心の絆がより一層深まることを期待いたします。
■「ふるさと絆通信」であなたの思いを伝えてみませんか。
ふるさと絆通信では、避難されている皆さんへ想いを伝えていただける方を募集しています。
避難生活での活動や日々の生活の中で感じていること、ふるさと双葉町への想いをこのコーナーでお話ください。双葉町民の方ならどなたでも結構ですので、ご連絡をお待ちしています。
株式会社鹿島印刷所(南相馬市)の記者が町民の皆さんの避難先を訪問し、インタビュー取材をさせていただきます。
掲載する文章は、その内容をもとに記者が作成しますので、インタビューをお受けいただいた方が文章を作成する必要はありません。
問合せ:秘書広報課
【電話】0240-33-0125
■長谷川 久三子(はせがわくみこ)さん
居住先:双葉郡双葉町
▽「キャシー」の起源は双葉町
子どもの頃、新山地区で両親が経営していたバイク店のお客様からいただいたカセットテープ。内容は中学校で使われていた英語教科書のリスニング教材でした。当時はまだ小学生で、英語を習う年齢ではなく、教科書が読めるわけでもないまま興味本位でテープの再生を繰り返すうち、耳から覚えて声に出してまねる、いわゆる「耳コピ」をするようになり、気が付けば英語が好きになっていました。
震災後、いわき市内の英語教室で子ども向けレッスンの講師、双葉郡内の中学・高校で語学やコミュニケーションなどの学習支援に携わる中、「キャシー」という愛称で皆さんと時間を共にする機会をいただきましたが、その始まりは外国や都会でもなく「故郷・双葉町」です。
▽転居と「各県1人の狭き門」への挑戦
中学入学後は、部活でバレーボールに親しみ、好きで得意な科目は英語、良い意味でちょっと目立つ普通の女子生徒としての日々を送っていましたが、父が交通事故で急逝し、一家は鹿児島県へ移り住みました。双葉町から千キロ以上離れ、気候風土が違い独特の方言もあり、多少戸惑うこともありました。
そして、高校進学後、英語好きが高じて海外への関心が強くなる中、交通遺児育英会が主催する海外語学研修を知り応募しました。当時、定員は県から1人の狭き門でしたが、書類や面接による審査を経て周りの応援のおかげで選考をクリアし、ニュージーランドで6週間の貴重な経験をすることができました。
▽双葉町での生活は「孫ターン」
町内にある母の実家に帰省した際、祖母が生活に不自由を感じている様子でした。
一方、私は子どもの頃に離れた双葉町への興味などもあっため、家族を代表して一緒に暮らすことに手を挙げました。その後、祖母は介護度が高くなり町内の施設に入所し、私はいわき市に移りましたが、仕事の合間など頻繁に面会へ訪れていました。
▽町のために「町に暮らす」ことを選択
震災翌年、祖母が亡くなりました。その頃、町への帰還は難しい状況でしたが、いつかは戻りたいと思っていたため、駅西住宅入居者募集に当選したときはとても嬉しく感じられました。そして、昨年6月に入居し、今年1月からは、大熊町内で開業したホテルに通勤しています。
町内はインフラ整備の途上で、私にとって3度目の双葉暮らしは「面白いぐらい不便」なスタートとなりました。こうして町で生活することは、小さなことかもしれませんが、町のためになることと考え、今後増えるであろう「便利さ」を楽しみながら、復興を見守っていきたいと思います。