- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県水戸市
- 広報紙名 : 広報みと 令和7年9月1日号
■城下町の記憶と、日々の暮らしが寄り添う 備前堀特定ゾーン
水をたたえる備前堀、季節の祭りににぎわう吉田神社、商人の息づかいが今も残るまちなみ。
歴史を語る風景と、安心して過ごせる日常が交差するもう一つの水戸。そんな景観が、地域の人の手で守られ、育まれています。
◇01 備前堀の風景に調和するまちなみづくり
江戸時代に掘られた備前堀は、まちの記憶を今に伝えています。この水辺と、水辺に寄り添うまちなみを大切にするため、備前堀の沿道地区の一部を「都市景観重点地区」に指定し、ゆるやかな和の趣を生かした景観づくりを進めています。
地域の人々が中心となって育んできた、この場所ならではの落ち着きと潤いのある景観を、次の世代へとつないでいきます。
◇02 水面に揺れる祈り―備前堀の灯ろう流し
夏の夜、備前堀の流れに揺れる灯ろうのあかり。銷魂橋(たまげばし)から三又橋まで、オレンジ色の光が水面を彩る幻想的なひとときとして、先祖への祈りや平和への願いをのせ流れていきます。この行事は、地元の方々が中心となり守り続けてきた、夏の風物詩。商店街と地域の人々のつながりの中で、地域の記憶をやさしく照らし、人々の記憶に刻まれていきます。
◇03 暮らしの風景を、次の時代へ
歴史とともに歩んできた下市のまちは、今、変わりゆく時を迎えています。日々の暮らしに寄り添うまちづくりが、これまで以上に求められています。
新たな景観計画では、暮らしの質を重視した方針を新たに位置づけ、若い世代の市民と協働しながら、「住んでいてよかった」と思えるような日常の風景を育てていく取組を進めます。目指すのは、地域に眠る資源を活かした、知恵と熱意によるまちづくり。未来を見据えた一歩が、いま踏み出されています。
◇やってみたいを、まちで育てる「ためしもいち!」始動ー
「ためしもいち」は、市民団体「さとととし」と地域の人々で、下市エリアを舞台に、地域に眠る資源を活かし、「やってみたい」という思いをかたちにするプロジェクト。雑貨屋や本屋を開いてみたい。そんな小さな夢を“ためしてみる”機会を、地域の人々とともに紡ぎます。
・さとととし代表 中村彩乃さん 川島飛鳥さん
「さとととし」とは…下市と都市部の両方で活動し、地域の課題解決と新たな魅力や価値を生み出すことを得意とする団体です。
・Comment
400年の歴史を持つ下市エリアで、11月1日(土)、高校生から50代まで多様な10名の「ためしもいち」参加者が、それぞれの「やってみたい」を実践します。
皆さんにも足を運んでいただき、下市の景観や営みをいつもと違う視点で体験し、まちの魅力や可能性を再発見できる1日になればと思っています。
暮らしの延長線上で、「やってみたい」をまちで試すと、どんな変化や発見があるのか、私たちも楽しみです!
■時代ごとの営みや記憶が重なるまちなか まちなか特定ゾーン
メインストリートを歩けば、光と風が行き交う通りや、心に触れる風景に出会えます。
芸術や文化が息づく建物や空間には、時の流れが刻まれ、今、居心地のよさとにぎわいの芽を育てる取組が始まっています。
◇01 芸術・文化とにぎわいが交差する場所
まちなかに立つ水戸芸術館の塔は、遠くからでもこのまちの中心を知らせてくれます。令和5年、隣合うように市民会館が開館し、芸術文化の拠点として、さらに人が集い語り合う風景が生まれました。
通りを歩けば、コンサートの余韻や、アートに触れた人々の笑顔であふれています。芸術文化と暮らしが自然に溶け合うこの場所は、人のにぎわいと温もり、現代と未来が同時に息づいています。
◇02 時間の重なりが息づくまち
古地図に記された町名、今も暮らしを支える商店街。まちなかには、時代ごとの営みが折り重なり、今の景観が形づくられています。昔のたたずまいを残す建物や、新たな姿を見せる通りは、まちの営みの記憶を伝えてくれます。
まちの積み重ねの中にある個性を大切に、まちの表情を受け継いでいく。水戸らしい景観づくりの形です。
■季節の移ろいが歴史の息づかいと響き合う 保和苑特定ゾーン
あじさいが彩る風景の中に、歴史と自然が穏やかに息づいています。この地域は、歩くほどに印象に残る景観が残っています。
◇あじさいと歴史が重なる風景
徳川光圀公が好んだ寺の庭は、保和園と呼ばれるようになり、やがて保和苑として親しまれてきました。
重厚な社殿をもつ八幡宮や、古代の姿をとどめる愛宕山古墳も、この地域の歴史を物語る存在です。
湧水や緑に囲まれた環境と、初夏に咲くあじさいの風景が、訪れる人にこの地ならではの魅力を伝えています。
四季折々の変化を通じて、心に残る景観が育まれています。
■おわりに
景観計画は、未来の風景を描く設計図であるとともに、まちと人が交わすあたたかな対話であり、心を届ける手紙でもあります。
歩く道、見上げる空、ふと立ち止まる風景-日常の1コマが、水戸らしい景観を日々育んでいます。市民1人1人のまなざしと行動が、まちの姿を少しずつ変えていきます。
この手紙が、明日への小さな芽吹きとなりますように。
問合せ:都市計画課
【電話】232-9206