- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県水戸市
- 広報紙名 : 広報みと 令和7年9月1日号
私たちが暮らすこのまちは、長い時をかけて、風景という名の物語を紡いできました。千波湖に映る光、城跡に重なる歴史の記憶、私たちの日々の営み。それらが寄り添い、水戸の景観を形づくっています。
この特集では、そんな水戸の景観の魅力と、未来へ手渡したい思いを、紐解いていきます。
■「景観」とはまちが紡いできた物語
「景観(けいかん)」という言葉には、ふたつの意味が重なっています。一つは、「まちに広がる風景」。もう一つは、「それを見つめ、感じ取る人のまなざし」。
長い時間の中で育まれてきた景観には、その土地の自然や歴史、文化、人の営みが息づいています。
景観とは、まちが紡いできた物語。私たちと風景との関わり合いそのものなのです。
■景観づくりの意義
景観づくりは、まちの見た目をきれいにするだけの取組ではありません。良好な景観は、人々に快適さをもたらし、そこに関わる人々の、その場所への誇りや愛着を育みます。そして、訪れた人に良い印象を与え、まちへの関心や憧れを生み出します。
水戸らしい魅力ある景観を守り育てることは、誰もが住み続けたいと思えるまちづくりの土台となります。
■新たな「景観計画」
市では、1990年代から景観を大切にするまちづくりに取り組んできました。2008年には、景観法に基づく「水戸市景観計画」を策定し、水戸らしい景観の形成を進めてきました。
それから年月がたち、社会や暮らしのあり方が大きく変化する中で、景観に求められる役割も変わってきています。こうした変化にしっかりと応え、水戸の魅力を未来へつなげていくために、今年、景観計画を新たな時代にふさわしい形へ進化させます。
次のページから、新たな景観計画の一端を紹介します。
■千波湖の水面に空が映り偕楽園の梅がやさしく香る 偕楽園・千波湖特定ゾーン※
※「特定ゾーン」…景観計画における、地域の特色を活いかした景観づくりを進めるエリア
この場所は、自然と歴史が育んできた水戸の誇りです。水や緑が織りなす風景のなかで、人々は散歩を楽しみ、四季の移ろいに心をゆだねます。まちなかにありながら、静けさとにぎわいが調和するこの空間は、過去と未来をつなぐ、水戸らしい景観の象徴です。
◇01 千波湖の記憶 時を映す水面
かつて、今よりもはるかに広大だった千波湖。水戸のまちとともに形を変えながら、湖は静かに人々の暮らしを映しつづけてきました。観覧車がまわり、こどもたちの笑い声が響いた昭和の遊園地、そして今、水辺を走る人、カメラを構える旅人。
変わりゆく時代のなかで、千波湖は、これからも人々の営みと季節の移ろいを映します。
◇02 風致と調和が育んできたやさしい風景
偕楽園や千波湖のまわりには、長く愛されてきた風景があります。その美しさを守るために、市は、この地域を「風致地区」や「屋外広告物特別規制地区」に指定してきました。木々のざわめき、鳥の声、水辺の静けさ。目に映るだけでなく、心で感じる「風致」という豊かさを大切に、建築物、看板の色や高さなどにも工夫を重ねてきました。それは、まちと自然が寄り添う、水戸らしい景観を未来につなぐための、工夫のかたちです。
◇03 千波湖に新しい風景が生まれます
千波湖の湖畔に、新たなにぎわいの場が生まれようとしています。この場所を、もっと魅力ある空間へと育てていくために、市は民間事業者とともに、整備を進めています。
訪れる人が思い思いの時間を過ごし、心に残る風景を持ち帰ることができるように。ここから、次の風景が紡がれていきます。
◇Interview
普段は退勤後に家の周りを走ることが多いですが、気分転換をしたいときに千波湖の周りを走っています。
1周3kmの距離がちょうど良く、開けた空間で、走りながら良い風が吹いていると感じます。
また四季折々の花々など、季節によって少しずつ違う景色が見られるので、来るたびに新しい発見がありますね。
千波湖でランニングをする 小野湧真(ゆうしん)さん
■この場所は、水戸が歩んできた歴史 弘道館・水戸城跡特定ゾーン
藩校の風格、復元された大手門や二の丸角櫓(すみやぐら)、そして深い緑に包まれた土塁の線。まちなかにありながら、時の流れがゆるやかになるような風景があります。市民の手で少しずつよみがえってきた歴史の風景は、今を生きる私たちに、過去と未来をつなぐ記憶の大切さを語りかけてきます。
◇01 土と緑に包まれた、水戸城の記憶
かつて水戸の台地に築かれた水戸城は、天守を持たずとも、土塁と堀に囲まれた壮大な姿で人々を魅了してきました。藩政の中心として機能し、城下町と一体となって水戸の礎を築きました。そして今、水戸城の土塁や堀、弘道館のたたずまいが、往時を語りかけてくれます。
◇02 よみがえる城の記憶―大手門と二の丸角櫓の復元
戦災などにより大半が焼失した水戸城跡に、かつての姿がよみがえりました。令和2年に復元された大手門、翌年に整備された二の丸角櫓と土塀。どちらも天保年間の姿をもとに、史料や発掘調査に基づいて復元されました。寄附や地元職人の手仕事など、多くの想(おも)いと力が重なり合って完成した復元事業は、まちの新たなシンボルとして、歴史を語り続けています。
◇03 歴史とまちなみが調和する景観のしくみ
弘道館や水戸城跡のあるまちなかでは、歴史の趣と都市のにぎわいが調和しています。この風景を守り育てていくために、市は「都市景観重点地区」や「屋外広告物特別規制地区」を指定し、地域の特性に応じた景観づくりを進めています。
歴史ある建物や緑に調和するよう、広告の色や設置場所にも配慮を重ね、建物や通りが少しずつ整えられてきました。
一つ一つの取組が、落ち着きと風格のあるまちなみを形づくります。
◇Interview
弘道館や水戸城跡には、学校や図書館が立ち並び、平日・休日を問わず穏やかな時間が流れていると感じます。白壁の続く「水戸学の道」は散歩にうってつけです。
私たち家族は、弘道館の周りの環境に惹(ひ)かれ、水戸市に移住してきました。
大手門周辺では、ビアフェスや梅まつりなどのイベントが開催されることもあり、そのときには大いににぎわいます。
「ハレ」と「ケ」の両方を楽しめる、豊かな時間を過ごせる環境がここにはあります。
弘道館の近所に住む 倉澤晃子(てるこ)さん
問合せ:都市計画課
【電話】232-9206