文化 古河歴史見聞録

■~人・歴史・文化をつなぐ~ 生誕100年 永井路子と古河
合併20周年、市制75周年、古河駅開業140年など、今年は古河市にとって色々(いろいろ)な意味で節目の年に当たりますが、なんといっても昭和100年。ということは…。

○永井路子生誕100年
今年は大正14年生まれの歴史小説家・古河市名誉市民の故永井路子先生の生誕100年にも当たるのです。目下、来月から開催する企画展の準備に忙殺されているところですが、あらためて永井先生の生涯をたどってみると、古河の文化行政・まちづくりにおける先生のご貢献がいかに大きかったか、ただただ驚嘆(きょうたん)するばかりです。

○人・歴史・文化をつなぐ
昭和46年12月、古河市議会で「史跡公園と歴史博物館の設立に関する請願書」が採択され、古河公方(くぼう)公園の整備が始まりました。この請願は古河郷土史研究会から提出されたものですが、そのきっかけとなったのは永井先生でした。郷土史研究会のメンバーを鎌倉に招き、あちこちの史跡を案内されるとともに、鎌倉の古都保存運動代表の原実氏との懇談を仲介。このことが古河市における史跡保存につながったのです。
その後、市史編さん事業には参与として参画され、多くの歴史学者との橋渡し役となり、ご自身も市関連の刊行物に積極的にご寄稿くださいました。
古河三高、古河三中の校歌作詞をそれぞれ丸山薫氏、伊藤桂一氏という当代きっての詩人に依頼できたのも、文化講演会に司馬遼太郎氏を招くことができたのも、永井先生のご協力があってのこと。
他にも古河二高同窓会などを通じて、他市町村との文化交流に携わってくださり、また『鷹見泉石(せんせき)日記』や『わがまち古河』等の刊行の際には出版社との仲介の労をおとりいただいただけでなく、費用面においても大きなご支援を賜りました。

○文化施設の整備・運営にも
現在、古河歴史博物館には国指定重要文化財「鷹見泉石関係資料」が収蔵されていますが、この貴重な資料群も、先生のご助言をきっかけに古河に収蔵されることになったといいます。古河文学館の建設に当たっては、膨大な所蔵品をご寄贈いただいたばかりでなく「個人記念館ではなく文学館を」と、ご自身のことは二の次で、古河ゆかりの作家の顕彰(けんしょう)と文学資料の保存を提言されました。
さらに、それぞれの開館時を含め、折々にいただいた寄附金は、生前だけでも約5千万円、また、ご逝去時には、著作権と共に1億5千万円もの遺産金を遺贈くださっています。

○名誉市民として長く記憶を
このほかにも、たびたび講演会や講座の講師を無償でお引き受けくださり、各種メディアで古河をPRしていただくなど、先生からの物心両面にわたるご支援は、到底、この紙幅(しふく)で言い尽くすことはできません。先生なくしては、古河の「歴史文化のまちづくり」はなし得なかったと言えます。
先生は古河・鎌倉両市の名誉市民となられていますが、ご逝去をきっかけに、両市で新たに文化・観光交流協定が結ばれました。この協定に基づき、企画展も古河で開催後、鎌倉に巡回します。
まさに、名誉市民むべなるかな。この大恩人を長くご記憶いただきたい、そんな思いを込めて展覧会の準備に当たります。皆さまのご高覧をお待ちしております。

古河文学館学芸員 秋澤正之