文化 【特集】守谷の新たな宝

先人が生み出し、地域で守り伝えられてきた貴重な財産である文化財。
今年5月、新たに指定された3つの文化財を紹介します。

◆11/9(日)開催!! 守谷の歴史満喫ロゲイニング
今回指定された「喚鐘」と「熊野観心十界曼荼羅」が、限定公開されます。詳しくは広報もりや10月号でお知らせします。

■六字名号(ろくじみょうごう)(書跡)
八幡山清浄院雲天寺(はちまんざんしょうじょういんうんてんじ)所蔵
祐天上人(ゆうてんしょうにん)がしたためた掛け軸。祐天特有の丸みを帯びた書風が特徴。裏面の銘文が、祐天上人の真筆であることを証明しており、寺伝では寛政の年(1797年)に木造祐天上人坐像とともに寄進されたとされる。

「南無阿弥陀仏」と書かれている。その下には「祐天」と彼の印が書かれている。

・祐天上人
江戸時代中期に活躍した浄土宗の高僧。呪術的な能力を備えていたとして、「累ケ淵」などの多くの説話がある。のちに東京・芝の増上寺第36世法主となり大僧正に任ぜられた。

○指定のポイント
・祐天上人と守谷のつながりを示す
談義僧として雲天寺を訪れた際には、祐天上人の法話に感銘を受けて宗派を替える人もいたそう。
・保存状態が良い
劣化しやすい掛け軸でありながら、細部の文字まで鮮明に残っている。

一般公開:原則無し
※今後、研究会や勉強会などの要望に応じた限定的な公開を検討

■喚鐘(かんしょう)(工芸品)
八幡山清浄院雲天寺(はちまんざんしょうじょういんうんてんじ)所蔵
嘉永2年(1849年)に鋳造された銅製の小型鐘。第九代西村和泉守(にしむらいずみのかみ)による最初期の作とされ、伝統的な形状と精巧な意匠が特徴。
戦時下で金属供出されたが、2019年にネットオークションで発見され、雲天寺に戻ったという珍しい経緯を持つ。

喚鐘に刻まれた「下総国相馬郡守谷町八幡山雲天寺」を見たオークション落札者が雲天寺に連絡し、戻ることに。

・西村和泉守
江戸時代~近代に活躍した鋳物師。代々その名を継ぎ、十一代にわたって全国に多くの作品を残している。

○指定のポイント!
・江戸を代表する鋳物師の作
龍頭(りゅうず)や撞座(どうざ)の意匠など細かなところが代々継承されている。
・奇跡と奇縁
供出されたものが溶かされずに残り、持ち主に戻るケースはごく少数であった。

一般公開:予約により対応

◇守谷の宝として後世に残す
八幡山雲天寺 住職 下村順一(しもむらじゅんいつ)
六字名号は、先代の住職たちが大切に引き継いできたもので、年に一度広げて干すなどし、丁寧に管理しています。祐天上人は当寺と深いご縁のある高僧であり、祐天上人と地域の歴史的なつながりを皆さんにも知っていただきたいと願っています。
喚鐘がネットオークションで落札されたことを知って、戦時中に供出されたものが残っていたことに驚きました。歴代の上人たちが守り伝えてきたものは、現住職が保管や修繕を行うべきと考え、買い戻しました。
守谷にはまだ多くの宝が眠っています。私たち寺社仏閣は、地域の文化発展に貢献し、文化財を所有者だけのものではなく、守谷の宝として保存・活用し、記録を後世に残す使命を強く感じています。

雲天寺には、いたるところにお地蔵様がいて、やさしく微笑んでいます。

■熊野観心十界曼荼羅(くまのかんしんじっかいまんだら)(絵画)
雲光山華蔵院清瀧寺(うんこうざんけぞういんせいりゅうじ)所蔵
江戸時代18世紀に制作された紙に彩色された絵の掛け軸。熊野比丘尼(くまのびくに)によって熊野地方を中心に広められた曼荼羅(まんだら)で、極楽・地獄を含む十界(四聖と六道)が描かれている。狩野派風の人物描写や植物表現に優れ、伝統的な構図を踏襲している。

梅や柳などの植物が繊細に描かれている。御開帳時は、副住職による絵解き(解説)を聞くことができる。

・熊野比丘尼
室町時代後期から江戸時代の初期に熊野信仰を広めた尼僧。曼荼羅の絵解きをしながら信仰を広めた。性別や身分を問わない熊野信仰は、女性の信仰を集めた。

○指定のポイント
・希少な曼荼羅
関東で5つしか残されておらず、幻の曼荼羅と言われている。
・保存状態が良い
表面に目立つ折れや断裂がなくきれいである。

一般公開:毎年8月1日~20日

◇地域の宝物である文化財を守る
雲光山清瀧寺 住職 雪草洋幸(せっそうようこう)
雲光山清瀧寺 副住職 雪草忠晃(せっそうちゅうこう)
熊野比丘尼たちのご縁でこの地に残された曼荼羅ですが、特にこの地域では、女性の念仏講である女人講が盛んで、多くの女性の信仰に支えられてきた歴史があります。
清瀧寺には多くの掛け軸が残っており、今回指定されなかったものも含め、地域の皆さんと協力して保存と修復に取り組んでいきたいと考えています。文化財の価値を知ってもらい、次の世代へつないでいくことが私たちの使命です。
当寺ではどなたでも気軽に訪れていただける場所を目指しています。近年はインスタグラムなどSNSを活用しており、参拝者も増えてきました。戦争の時代には公開できなかった文化財を、平和な今だからこそ広く知っていただけることに感謝しています。これからも地域の宝物である文化財を大切に守り、皆さんと共に伝えていきたいと思います。

夏の清瀧寺の境内は、風鈴やすだれなど涼しげな飾りにあふれています。「来訪者の皆さんに心地よい時間を過ごしてほしい」という副住職の奥様のアイデアなんだとか。

問合先:生涯学習課 生涯学習G 内線277