くらし SDGsで共に創る持続可能な行方 第52回

地域からの脱炭素
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里

■1.『地域脱炭素ロードマップ』
脱炭素にむけた取り組みにおいては、地方自治体の役割が、国や企業等と並んで重要となります。日本では、国・地方脱炭素実現会議(議長、内閣官房長官)が『地域脱炭素ロードマップ』(以下、ロードマップ)を2021年に策定しました。
ロードマップのキーメッセージとしては「地域課題を解決し、地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する脱炭素に国全体で取り組み、さらに世界へと広げるために、特に2030年までに集中して行う取組・施策を中心に、地域の成長戦略ともなる地域脱炭素の行程と具体策を示すものである」(国・地方脱炭素実現会議2021。図参照)とされています。つまり、その副題にあるように「地方からはじまる、次の時代への移行戦略」といえます。

■2.脱炭素は地域の成長戦略
ロードマップでは「地域脱炭素は、脱炭素を成長の機会と捉える時代の地域の成長戦略」としています。この点、同年に策定された『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』(本連載第51回参照)と親和性が高く、その地方創生版といえるでしょう。主役は「自治体・地域企業・市民など地域の関係者」であり、具体的には次の3つの点から地方創生に貢献できるとされています(国・地方脱炭素実現会議2021。以下、同)。
第一に、コロナ禍からの「よりよい復興」(BBB)に鑑み、地域脱炭素は地域の成長戦略につながります。欧米等では「グリーンリカバリー」つまり持続可能で脱炭素な方向(公共交通機関の促進等)が重視されています。環境対策はもはや経済成長の源泉でもあり、地域経済においても脱炭素をできるだけ早期に実現することが、地域の企業立地・投資上の魅力を高め、産業の競争力を維持向上させる上で重要といえます。

■3.再エネ等地域資源を活用、一人一人が主体となる「暮らしの脱炭素」へ
第二に、特にカギとなる省エネ等拡大等の、地域資源の最大源の活用により、地域の課題解決に貢献することが挙げられます。地域資源を生かし「消費する地域」から「生みだす地域」に移行することも重要です。
例えば、地元で食料・木材等を賄うことは、輸送にかかるCO2を減らすとともに、地域産業を支えることにつながります。その収益を地域内で再投資することで、新たな産業と雇用を生むことが期待されます。加えて、地域脱炭素の取り組みは、防災・減災や生活の質の向上などのさまざまな地域の課題の解決にも貢献し得るとされます。
そして第三に、一人一人が主体となって今ある技術で取り組めることも重要です。わが国の温室効果ガス排出量は、消費ベースで約6割を家計が占めるとされており「暮らしの脱炭素」が重要といえます。ライフスタイルを大量生産・大量消費・大量廃棄から持続可能な適量生産・適量購入・循環利用へと転換することが求められます。
また、今ある技術の最大限活用が不可欠です。再エネ等、高省エネ性能機器やリユース製品の使用等、脱炭素型の製品・サービスの利用により、短期間で目に見える成果を出しやすいとされます。

※図は本紙をご参照ください。