- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県行方市
- 広報紙名 : 市報なめがた No.242(令和7年10月号)
地域共生社会と地方創生
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
1.新たな時代の地域・福祉と「まち・ひと・しごと創生」
日本では、少子高齢化・人口減少等に対応する新たな時代の福祉と、地域社会づくりが求められています。厚生労働省(2015)『誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現』では、次の三つの課題をあげています。第一に、家族・地域社会の変化に伴い複雑化する支援ニーズへの対応、第二に、人口減少社会における福祉人材の確保と質の高いサービスを効率的に提供する必要性の高まり、そして第三に、誰もが支え合う社会の実現の必要性と地域の支援ニーズの変化への対応です。
また、少子高齢化や人口減少に対応し「それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために」『まち・ひと・しごと創生法』が、2016年に成立しました。ここでは、次の三つの創生を『まち・ひと・しごと創生総合戦略』において、一体的に推進することが求められています。第一に「まち」つまり「国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成」、第二に「ひと」すなわち「地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保」、そして第三に「しごと」つまり「地域における魅力ある多様な就業の機会の創出」です。
2.地域共生社会とは
こうした中で、新たなアプローチとして地域共生社会が推進されています。地域共生社会とは「全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り高め合う」社会とされています(『経済財政運営と改革の基本方針2016』(同年6月2日閣議決定、同『ニッポン一億総活躍プラン』でも言及)。これに伴い、2018年に社会福祉法等の一部が改正され「地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない」と規定されました。
また『まち・ひと・しごと創生総合戦略』(2018改訂版)では、地域共生社会の実現について、次のように強調されています。「誰もが住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に提供される地域包括ケアシステムの構築を進めるとともに、社会保障や地域産業といった領域を超えて、地域の住民や多様な主体が支え合い、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく」こととされています。
3.つながり・支え合いと寄り添い
地域共生社会が目指すのは「制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」(厚生労働省2017)とされます。「地域社会の持続的発展」を目指して、地域住民による「気にかけ合う関係性」すなわち、つながり・支え合い、そして専門職による「伴走型支援」・寄り添いによるセーフティーネットの構築が重視されています(同2023)
