- 発行日 :
- 自治体名 : 群馬県前橋市
- 広報紙名 : 広報まえばし 2025年7月1日号
■着物の記憶を日傘に込めて
セキネ洋傘店店主
関根健一さん・82歳
千代田町三丁目
弁天通り商店街に店を構える明治37年創業のセキネ洋傘店。四代目の関根健一さんは、20歳で家業を継ぎ、傘作りの道を歩んできた。傘の修理や着物を再利用した日傘作りを手がけ、全国から「思い出の着物を日傘にしてほしい」という依頼が届く。
今から約20年前、「装飾用の傘を作ってほしい」という声に応え、着物から傘を仕立てたことが着物を再利用した日傘作りの始まりだった。
「雨傘にするには縫い目が不向きだけど、日傘なら問題ない。思いのほか良くできました」
日傘作りの全ての工程は関根さんの手仕事。着物の柄や風合いを生かしながら、傘の骨組みに合わせて裁断・縫製していく。反物の両端にあたる着物の「耳」の部分は、傘布の縁に活用。縫い目が伸縮しないと美しい形にならないため、下糸を使わない専用のミシンで一針一針縫い合わせる。
「一番のこだわりは形。着物は一点ものだから、失敗は許されない。常に真剣勝負です」と関根さん。理想の形に仕上がらなければ、完成後でも骨組みから外して縫い直すという。
現在、関根さんの下で傘作りを学ぶ女性がいる。専用のミシンは国内にほとんどなく、関根さんが店で縫い方を指導する。
「店を継いでもらうつもりはないけど、技術は残していけたら」
大切な思いとともに、手仕事の技は確かに引き継がれていく。