子育て 特集 おいしい学校給食、笑顔の理由(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 群馬県千代田町
- 広報紙名 : 広報ちよだ 2025年8月号
■学校給食が届ける、子どもたちの成長と地域の絆
誰もが懐かしい思い出を語れる、魔法の時間「給食」。ただお腹を満たすだけじゃなく、栄養バランスや食育を通じて、健康的な食習慣や地域の魅力、日本の伝統を学ぶ特別な時間でした。特別献立の日のワクワク感や地元食材の嬉しさ、あの瞬間を思い出すと笑顔になりますよね。今回は、そんな給食の裏側に迫ります。誰が作り、どんな思いが込められているのか、知られざる給食の魅力を一緒に探りましょう!
◇学校給食の歴史
日本の給食は、1889年に山形県鶴岡市で始まり、貧しい子どもたちにおにぎりや漬物を提供することが目的でした。大正時代には都市部で普及し、戦後の食糧不足の際、アメリカからの援助で再開され、1954年には「学校給食法」の制定により全国に広がりました。昭和後期から平成にかけて、メニューが多様化し、和食が主流となり、「地産地消」や季節の行事に合わせた特別メニューが食文化教育に貢献しています。令和時代には、栄養バランスを重視した食育が強化され、アレルギー対策も進み、安心して食事を楽しめる環境が整っています。給食は、子どもたちの健康維持や食への関心を高める重要な教育手段として進化し続けており、地域の特色や食材を活かした取り組みも進展しています。
◇学校給食の役割
給食は単に栄養の供給だけでなく、「食育」という重要な役割も担っています。日本の学校給食では、管理栄養士がバランスを考慮したメニューを提供することで、子どもたちの健康的な食事を支えています。それと同時に、給食は日本の伝統文化や季節の行事、地域の特産物に触れる機会も提供しています。四季に合わせた行事食や旬の食材を通じて、食材の背景や文化を学ぶことができます。
給食は地方自治体や学校による特別教室やイベント、国の支援もあり、食育が次世代の健康的な食習慣の形成に貢献しているのです。これにより、子どもたちは食を通じて総合的な教育を受け、豊かな食生活の理解を深めていくことが期待されます。
◇地産地消の取組
給食における「地産地消」とは、地域で生産された食材を給食メニューに取り入れる取り組みです。新鮮で安全な地元食材を使うことで、地域の農業支援や経済活性化を目指します。また、子どもたちが地元食材に親しむことで、地域の文化理解や食への関心を高めることが期待されています。
具体的には、(1)地元農家と連携し季節ごとに新鮮な野菜を納入、(2)生産者が学校を訪問したり児童が農場を訪れて生産過程を学ぶ機会を提供、(3)地産地消の日に特別メニューを提供、(4)郷土料理を給食に加えて食文化を学ぶ機会を増やしています。
■地元の新鮮な食材を提供してくれる野菜農家の方々
地元の野菜農家の方々は、地域で作られた新鮮な野菜を学校に提供することで地産地消を支えています。給食センターと協力して、安全で品質の良い野菜を供給し、子どもたちが安心して食べられる給食を実現しています。
◇野菜生産者の声
「農事組合法人木崎」は、平成18年に県の指導のもと農業生産の協業化により生産性を向上させ、組合員の利益を増進することを目的に設立されました。設立当時は、主として米麦中心の生産体制でしたが、JAなどの指導により野菜生産を勧められ、現在は、ニガウリを始めとして大根、サトイモ、キャベツ、白菜、玉ねぎ、長ネギ、じゃがいもなど、季節に応じて様々な野菜を生産し、学校給食用に新鮮で健康的な野菜を安定供給しています。
野菜の収穫は時期によって変動があるため、給食で必要とされる一定量の野菜を確保するのが重要な課題となっています。組合には現在14名のメンバーが所属していますが、その多くが高齢化しており、全員が長期的に生産を続けることは難しい状況です。このため、町内の他の農家に参加を呼びかけ、さらなる協力体制を築くことが急務となっています。
このような状況下で、子どもたちが野菜を喜んで食べてくれることが何よりの励みになります。好き嫌いがあることも理解していますが、愛情を込めて育てた野菜をおいしく味わってもらえたら、生産者として非常に嬉しいです。この取り組みを通じて、地域の農業と子どもたちの健康を支える一助となることを目指しています。
農事組合法人 木崎 顧問 荒木敏一(としかず)さん
農事組合法人 木崎 組合長 石川泰廣(やすひろ)さん
■おいしい時間を通じて、もっと健康に。栄養教諭に聞いてみました
栄養教諭は、学校給食を通じて子どもたちの健康的な生活を支える重要な役割を担っています。栄養の専門家として教育現場での食育を推進し、子どもたちに食べ物の知識と健康的な食習慣を教えます。学校給食を通じて子どもたちの心身の健康を支えるとともに、未来に続く健康的な食習慣のサポートをする存在です。
◇栄養バランスや管理
栄養教諭は、子どもたちが健康的に成長するために必要な栄養素を含んだメニューを計画するため、国が定めた学校給食摂取基準をもとにしています。一食当たり小学校では約231円、中学校では約281円という価格で提供しています。
しかし、物価高や特に米の値段の高騰といった経済状況の影響で、予算内でメニューを作成することが難しくなっています。これに対処するため、農家や市場などと随時連携しながら、食材の選定を行い、バランスのとれた食事を提供しています。また、衛生管理にも細心の注意を払います。
特に夏場は気温が高く、食材が痛みやすいため、食中毒のリスクが増加します。そのため、使用する食材の種類を変えています。また、子どものアレルギー情報を正確に把握し、誤食を防ぐために教師や調理スタッフと密接な連携を欠かしません。
◇メニューの創意工夫
献立作成にあたり大切にしているのは、子どもたちに楽しんで食べてもらうことです。そのためには、子どもの嗜好を取り入れたメニューにすることが重要です。同時に栄養の偏りを避けるために多様な食材を使うこと、そして苦手な食材も克服できるような工夫が求められます。
健康を意識しながらも楽しめるかみかみメニューやリクエスト献立、夏休みの後に学校が楽しみになるようなメニューを提供しています。また、給食の時間に各教室に出向き、食事のマナー、噛むことの大切さや、野菜クイズや紙芝居、パワーポイントなどを活用して子どもたちの食に関する知識を増やす機会を設けています。毎月19日は「食育の日」として、食に関する動画を配信し、今年は開催中の大阪万博に関連して、関西地域の特色や食文化についての情報発信も行っています。子どもたちが食事時間を楽しみながら、健康と食文化への理解を深めていけるように努めています。
◇楽しい給食が第一
意外かもしれませんが、千代田町では、子どもたちに「じゃこサラダ」が人気です。中華料理の「サンラータン」やカナダの料理の「プーティン」も好評です。
私たちは、子どもたちにわくわくするような楽しい給食を提供したいと考えており、苦手な食材でも興味を持ってチャレンジするきっかけになればと願っています。献立表を見て、「今日はどんなメニューかな?」と楽しみにしてもらえたら嬉しいです。
町給食センター 栄養教諭 新開朋代さん