健康 健康 健やかで安心して暮らしていくために

■医療メモ 最近の近視治療
本庄市児玉郡医師会広報部
近年、近視人口の増加が世界的な問題となっています。世界全体の動向としては2020年時点で世界人口の約30%(約23億人)が近視であり、2050年までに世界人口の50%以上(約50億人)が近視になるとの予測です(Brien Holden Vision Institute報告)。
また、高度近視(-6.0D以上)の有病率も増加中であり、失明リスクが高いとされ、特に近年大変重要視されております。地域別の特徴としては東アジア(中国、日本、韓国、台湾)は特に深刻であり、10代の80〜90%が近視という報告もされています。特に都市部でより顕著であり、都市化、屋内生活、教育レベルの高さなどが影響していると考えられています。また、現在、欧米・アフリカ地域はアジア諸国と比較し、いまだ低率ではありますが、増加傾向にあります。
我が国においては文部科学省の「学校保健統計調査(2022年度)」によると:小学生:視力1.0未満の児童は約36.9%、中学生:約61.3%、高校生:約71.5%。原因として特にスマホ・タブレットの使用時間増加が影響しているとされています。また、成人の近視率においては近視率は40〜60%程度とされており、中でも高度近視においては全体の約10%前後という報告がなされております。高度近視のまま放置すると将来的に網膜剥離・緑内障・黄斑変性など重篤な眼疾患のリスクが増加すると考えられています。
近視増加の要因としては
(1)遺伝的要因(家族に近視が多いと発症リスクが高まる)、
(2)環境要因(屋外活動の減少〈太陽光曝露の不足〉、長時間の近距離作業〈スマホ、読書〉、教育レベルの高さ〈特に都市部で顕著〉)、
(3)生活習慣の変化(幼少期からのデジタルデバイス使用増加)などがあげられます。
予防対策として
(1)屋外活動を1日2時間以上行う、
(2)適切な読書距離(30センチ以上)をとる、
(3)照明環境の整備などがあげられます。
医療的対策としては
(1)アトロピン点眼薬(低濃度)の予防的使用:毎晩寝る前の点眼で、特に小児の近視進行を抑える効果が期待されます。副作用も少なく、国内外で研究が進んでいます、
(2)オルソケラトロジーレンズ(夜間装用型コンタクト)の使用:就寝中に特殊なコンタクトレンズを装着し、角膜の形状をフラットに矯正することにより、近視を軽減させ日中は裸眼で過ごせる上に近視進行抑制効果も報告されています、
(3)レーザー治療やICL(眼内コンタクトレンズ)成人の近視矯正には、LASIKやICLなどの視力回復手術が今も選択肢のひとつ。新世代ICLでは夜間の光のグレア、ハローも改善されつつあります。
最後に、近視は「放置せず、正しい知識と対策」が重要であり、特に成長期のお子さんには、早期対応が効果的です。気になる方は、眼科専門医に相談してみて下さい。