くらし 埼玉県こども動物自然公園 動物ZOO鑑

園長おすすめ ~コオロギ~

■コオロギ相撲
野口幸子(のぐちさちこ)園長

例年、9月に入っても暑さが続きますが、動物園では秋のイベントが始まります。その中で私の一押しは、「コオロギ相撲」です。
皆さんは「闘蟋(とうしつ)」という言葉をご存じでしょうか?文字どおり「闘うコオロギ」のことです。これは中国を中心に古くから親しまれてきた伝統的な遊びで、2匹のオスのコオロギを土俵に入れて闘わせます。勝敗は、相手を威嚇して逃げさせたほうが勝ち。勝ったコオロギは「リンッ」と勝どきをあげるのです。少し昔の映画になりますが、『ラストエンペラー』にも、主人公が幼少期にコオロギを飼っていたシーンが登場します。
動物園での「コオロギ相撲」は、2001年に開催された昆虫イベントのひとつとして始まり、以来、ほぼ毎年実施してきました。今年は9月21日(日)に開催を予定しています。開催日が決まると、まず主役であるコオロギ(当園では「フタホシコオロギ」のオス)を、3週間ほど前から準備します。闘う力を高めるため、専用の飼育ケージに1匹ずつ分けて入れ、毎日餌と水を取り替えながら大切に育てていきます。
当日は専用の土俵を用意し、参加者ははじめに強そうなコオロギを選びます。そして参加者同士の対戦が始まりますが、ここで重要なのは、オスの「闘う気持ち」を引き出すこと。専用の道具で触角を刺激し、やる気にさせてから対戦させます。この「触角刺激棒」の素材選びもポイントで、馬のたてがみやキリンの尻尾、エミューの羽など、動物園ならではの素材を使いながら、何が効果的かを探ってスタッフが準備します。うまくいかないこともありますが、勝った時にコオロギが誇らしげに「リンッ」と鳴くと、みんな夢中になります。勝ち進んだ参加者は、動物園で一番強いコオロギを持つ「横綱」に挑戦できます。横綱はさすがに強く、挑戦者がなかなか勝てないのが恒例です。ぜひあなたも、横綱に挑戦しに来てください。
さて、今年もイベントの準備が始まります。動物園の事務所には、出番を待つコオロギたちの「コロコロ……」という鳴き声が響き始めています。

※10月号は植物ZOO鑑です。

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