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■マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎とは肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌に感染することによっておこる呼吸器感染症です。例年晩秋から早春にかけて感染者が多くなります。患者としては幼児期、学童期、青年期が中心で80%は14歳以下ですが、成人の感染もみられます。

▽主な症状
(潜伏期間は通常2~3週間で)最初は発熱、全身のけん怠感、頭痛、喉の痛みなどで、せきは3~5日後から始まることが多く、当初はたんの目立たないせきで、徐々に強くなり、熱が下がった後も長く(3~4週間)続くのが特徴です。幼児では鼻炎症状がよくみられます。声がれ、耳痛、咽頭痛、おう吐など消化器症状、胸痛、皮疹などがみられることがあります。せきが増強し「ぜーぜー」する喘息(ぜんそく)様気管支炎を呈することも比較的多くみられます。
合併症として中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵(すい)炎、心筋炎、関節炎、神経疾患(ギラン・バレー症候群)、溶血性貧血など多彩なものがあります。

▽検査と診断
確定診断には患者の咽頭拭い液による迅速診断としてPCR法がありますが、実施可能施設は限られています。血液検査で抗体価をペア血清(2週間あけて2度採血)で確認することもあります。
呼吸器症状が強い場合は胸部レントゲン写真、血液ガス検査などが行われます。合併症が疑われる場合はそれぞれにあわせて検査することがあります。

▽治療
マイコプラズマ肺炎はマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系などの抗菌薬で治療されます。マイコプラズマ肺炎の治療に使用する抗菌薬は投与期間が通常より長い期間が推奨されています(日本小児科学会:小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方)。近年、マクロライド系抗菌薬が効かない「耐性菌」に感染したものもみられます。その場合は他の抗菌薬で治療します。テトラサイクリン系は8歳未満では使用できません。そのほか、対症療法的に解熱剤、鎮咳去痰剤(ちんがいきょたんざい)などの内服薬、輸液、酸素投与が行われます。軽症で済む人が多いですが、重症化した場合には、入院治療が必要となります。

▽予防と対策
感染経路は人のせきのしぶきを吸い込んだり(飛沫(ひまつ)感染)、感染者と接触したりすること(接触感染)により感染します。家庭のほか学校などの施設内でも感染の伝播(でんぱ)がみられます。保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭などでの感染伝播はみられるものの、短時間の暴露による感染拡大の可能性はそれほど高くなく、濃厚接触により感染することが多いと考えられています。肺炎マイコプラズマは熱に弱く、界面活性剤によっても失活します。
ふだんから流水とせっけんによる手洗いをすることが大切です。また、感染した場合は、家族間でもタオルの共用は避けましょう。せきのある場合にはマスクを着用するなど「せきエチケット」を守ることが大事です。

▽最近の発生状況
2020~2023年は秋冬期の流行はみられませんでしたが、2024-2025の今期は6月中旬ごろから感染数が増加、12月上旬時点で埼玉県では強い流行状況が続いています。

▽学校保健安全法における取り扱い
病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまでの期間の出席停止処置が必要とされています。
熱が下がり平熱となって、体が元気な状態になり、せきがおさまれば学校へ行けます。

問合せ:朝霞地区医師会 北澤 重孝(きたざわしげたか)
【電話】464-4666