- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県志木市
- 広報紙名 : 広報しき 令和7年10月号
朝霞地区医師会/杉田正興(すぎたまさおき)
インフルエンザ(流行性感冒)は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。風邪とよく似た症状を示しますが、より急激に発症し、重症化する可能性があるため注意が必要です。インフルエンザは毎年冬季に流行することが多く、たくさんの人が感染することから、社会的にも大きな影響を及ぼします。
インフルエンザウイルスは主に「A型」「B型」に分類されます。
感染経路は主に飛沫(まつ)感染と接触感染です。ウイルスを含んだ咳(せき)・くしゃみのしぶきが空気中に飛び、それを吸い込むことで感染するほか、ウイルスが付着した手で、口や鼻に触れることで体内に侵入します。
インフルエンザウイルスの潜伏期間は1~4日程度で、発症すると高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦(けん)怠感などの全身症状に加え、喉の痛みや咳、鼻水といった呼吸器症状が現れます。特に38℃以上の高熱が突然出ることが特徴的です。
一般的には1週間ほどで回復しますが、高齢者や乳幼児、基礎疾患のある人は重症化しやすく、肺炎や脳症などの合併症を起こすことがあります。毎年、インフルエンザによって多くの入院者や死亡者が出ることから、予防と早期治療が非常に重要です。
予防の基本は「ワクチン接種」と「日常的な感染対策」です。ワクチンは毎年その年に流行が予想されるウイルス株に基づいて作られており、感染を完全に防ぐことはできませんが、感染率を下げたり、重症化を抑えたりする効果があります。特に高齢者や医療従事者、乳幼児などは毎年の接種が推奨されます。
ワクチンは効果が現れるまで接種後2週間ほどかかり、約5か月間持続します。インフルエンザの流行は12~3月頃が中心となるため、それに備えるため早めに接種するようにしましょう。
日常生活における予防策としては、手洗い・うがい、マスクの着用、咳エチケットの徹底、室内の換気、十分な睡眠と栄養の確保などが重要です。また、人混みを避ける、体調が悪いときは無理をせず自宅で休むといった行動も、感染の拡大を防ぐうえで効果的です。
もしインフルエンザにかかってしまった場合は、できるだけ早く医療機関を受診するようにしましょう。治療は、抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザ、イナビル、リレンザなど)を発症早期に使用することで、症状の緩和や回復期間の短縮が期待できます。医師の指示に従って適切に使用してください。
治療中は、安静を保ち、十分な水分と栄養を摂ることが大切です。また、他人への感染を防ぐために外出を控え、職場や学校には医師の指示に従って復帰するようにしましょう。学校保健安全法では、発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで登校(登園)できないと定められています。
インフルエンザは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と症状が似ているため、自己判断が難しい場合があります。発熱や体調不良があるときは、医療機関に相談し、必要に応じて検査を受けることが勧められます。
インフルエンザは正しい知識と予防行動によって、重症化や流行を抑えることが可能です。個人の予防意識が、社会全体の健康を守ることにつながります。
問合せ:朝霞地区医師会
【電話】048-464-4666