文化 佐倉に響く100年の音色 ストリートオルガンの魅力(1)

佐倉ハーモニーホールに、3台のストリートオルガンがあることをご存じですか?
色とりどりの装飾が施され、手回しで音を奏でるこの楽器は、オランダをはじめとしたヨーロッパの街角で人々を楽しませてきました。市では、このストリートオルガンを通じて、音楽の楽しさと異文化の魅力を発信しています。

■佐倉市とストリートオルガン
▽佐倉とオランダのつながり
江戸時代末期、佐倉は、藩主の堀田正睦により蘭学(オランダを通じて日本に伝わった西洋の学問や文化など)が奨励され、蘭方医・佐藤泰然が蘭医学の塾兼診療所である「佐倉順天堂」を開くなど、西洋近代医学の重要な拠点として発展しました。
そのような歴史から、昭和62(1987)年に佐倉日蘭協会が設立され、同年、佐倉市民音楽ホールでは、オランダの自動楽器博物館(Museum Speelklok)所蔵のストリートオルガンやオルゴールを一堂に集めた「音のアンティーク展」を開催しました。この展覧会は、開催期間2週間で来場者1万2000人以上にものぼる大盛況を博し、「1台だけでも佐倉で身近に見聞きできないか」という多くの要望に応えて、ストリートオルガンを購入することになりました。

▽3台のストリートオルガンが佐倉へ
昭和63(1988)年6月、オランダ大使館の協力により、特別注文の中型ストリートオルガン「さくら」が届きました。翌年7月には、日蘭修好380周年を記念して、千葉銀行から小型ストリートオルガン「ヴェーニンゲン」が寄贈され、10月には、自動楽器博物館(Museum Speelklok)の紹介により、100年以上前にオランダで製造された貴重な大型ストリートオルガン「サーター」を購入。こうして、地方自治体としては全国で初めて、3台のオランダ製手回しストリートオルガンが佐倉市に揃うことになりました。
現在は、年十数回開催している演奏会や市内外のイベントなどで、変わらない音色を聞くことができます。また、今年、テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」で、「サーター」が鑑定評価額1500万円という高評価を受け、再び注目が集まっています。

■オランダで愛される音色
▽ストリートオルガンの歴史
ストリートオルガンの発祥については諸説あり、古いものでは、1700年代に、街頭でストリートオルガンを演奏する人の銅版画がイタリアに残されています。また、1880年ごろにフランスで開発され、ヨーロッパ各国に広まったという説もあります。
1920年ごろまでが全盛で、相当な数のストリートオルガンがありましたが、乱雑な扱いなどにより傷み、次第に数が減ってしまいました。そのような中、アムステルダムのペルリー家が楽器の修復や製造に力を入れたことで、オランダには品質の良いストリートオルガンが残り続けたとも言われています。

▽演奏の仕組み
ストリートオルガンは、教会などにあるパイプオルガンの一種で、ハンドルを人力やモーターで回して演奏する自動演奏楽器です。
開発された当初は、オルゴールと同じように、シリンダー(多数の細いピンがついた円筒)を回して演奏する構造でしたが、1900年ごろ、現在のように、厚紙に穴をあけた「ブック(楽譜)」と空気の力を利用して演奏する構造になりました。
楽器の裏側にハンドルを付け、これを回すことで「ふいご(空気を送り出す蛇腹状の装置)」に空気を入れ、同時に、折りたたみ式のブックを移動させて「キー(各パイプなどの楽器につながる鍵盤のようなもの)」を動かし演奏します。

■NEXT
2ページでは、3台のストリートオルガンを詳しく紹介します!