- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県東金市
- 広報紙名 : 広報とうがね 2025年10月1日号 No.1374
■東金の名産を作りまちおこしをしたい
・旨み発酵ファーム 髙戸(たかど)政彦(まさひこ)さん
さつまいもやにんにくを生産 冷製焼き芋は、大阪・関西万博にも出展
◆ゼロからの出発
右も左も分からない中、オンラインで勉強を始め、にんにくの作付けから始めました。
土づくりは道半ばでしたが、経験が大事だと思い、にんにくの種を秋に植え、翌夏に初めての収穫を行いました。農業の大変さを痛感する一方で、収穫の喜びと自分で育てたにんにくのおいしさに感動しました。
そして令和3年11月、仲間と法人を立ち上げ、本格的に農業経営をスタート。現在はにんにくとさつまいもを生産しています。
◆就農を志した2つのきっかけ
就農する前は鍼灸師でした。そこで直面した、がんにより29歳の若さで亡くなった友人、父のがん(現在は寛解間近)、がんの患者さま。「自分にできることは…?」と無力感でいっぱいになりました。自問自答を繰り返した結果、自分が納得できる食べ物を世の中の人に提供したいと思い、野菜づくりを志しました。
もう一つの理由は、誰もが働ける環境を作りたいという思いです。雇用を生み、さらに、そこで出来た作物を食べて健康になる。全てが良い循環になればという願いもありました。
◆不安を超える熱い思い
32歳の時に勉強を始め、怖いもの知らずで志だけで突っ走ってきました。
就農後は、きちんと作れるのか、売れるのか、収入になるのかなど…。不安はありますし、今後も消えないと思います。ただ、友人の死を経験し、限られた命の時間を知った今、本気で志したことを全力で取り組めることはとても幸せなことだと思います。
◆農業ならではの醍醐味
正直に言うと、農業は思い描いていたイメージとは全然違うことだらけです。食物(生き物)を取り扱うことの大変さ、自然との闘い、収穫して終わりではないこと。それに、人間は食べていかなければ生きていけないのに、軽く扱われてしまうことがほとんどですし、機械も高く、お金もたくさんかかります。
ただ、いつか花が咲くと思っています。作ったものは自信を持って「おいしい」と言えます。ただの焼き芋なのに、「他とは違う!」とリピートしてくださるファンのお客さまもいます。
また、農業の担い手も減る中、地域の方々から応援の温かい言葉をいただいたり、機械をお借りしたりと、たくさん助けていただいています。お礼もできず申し訳なく思うほどです。
自然や地域の方々と共に、忘れかけている人間本来の力を養えるのは、農業ならではの醍醐味だと思います。
◆伝統を復活まちおこしをしたい
「東金」と聞くと皆さんは何を思い浮かべますか。
私の主要な農地は、下武射田にあり、さつまいもを生産しています。千葉県では成田市や香取市などが有名ですが、武射田の芋はかつて「武射田芋」と呼ばれ、人々の食を支え、芋の名産地として知られていたそうです。しかし、時代の流れとともに、担い手が減り、伝統は途絶えてしまいました。地域の方が「この土地の歴史を、未来へつなぎたい」と懐かしそうにお話する姿を見て、次の世代へとバトンを渡していくことも私の使命になりました。実現には、独自の品質、ブランド化、独自販路による売り上げの最大化から雇用の創出は必要不可欠です。
東金の魅力を伝え、まちおこしを実現する。それがお世話になった方々への恩返しかなと思っています。
◆だから私は東金を選んだ
東金で生まれ育ったわけでも、両親が農家だったわけでもありません。農業を始めるにあたり、すごく差を感じました。畑もない。農機具を置く倉庫や納屋もない。収穫後の保管場所もない。当然お金に余裕もない。もし、就農する方にアドバイスできるなら一番重要なのは「志があること」「諦めないこと」かなと思います。
始めは農地を探すため、県内の色々な市を訪ねましたね。東金を選んだ最大の決め手は、私の情熱を市役所の方に一番感じてもらえたからです。今でも有益な情報を提供してくださり、とても助かっています。就農に当たり、行政の考え方もとても重要になりますので、これから始める方は、「ここだ」と思った場所で全力で取り組んでいただきたいです。一緒に農業を盛り上げていければ嬉しいです。
■PICK UP 就農者を支援する制度
◇経営開始資金
新たに経営を開始する方に、資金を助成します。
対象:経営開始時に49歳以下の認定新規就農者
交付額:年150万円×最長3年間
※交付には要件があります。詳しくはお問い合わせください。
◇経営発展支援事業
認定新規就農者の経営発展のため、機械・施設などの導入を支援します。
対象:
(1)就農時の年齢が原則49歳以下の認定新規就農者(親元就農者…親の経営に従事後、5年以内に継承)
(2)事業実施前年度または事業実施年度中に農業経営を開始し、事業実施年度中に要件を満たす独立・自営就農をしている方
補助率:3/4以内(上限1千万円。経営開始資金の対象者は、500万円)
※夫婦で開始する場合や複数で法人を設立する場合は異なります。
対象経費:機械(軽トラを除く)、施設、家畜導入、果樹・茶の新植・改植、機械などのリース料などの初期投資的な経費
※補助には要件があります。詳しくはお問い合わせください。
問合せ:農政課
【電話】50-1137