くらし 【6月は環境月間】特集 拾ってつなぐ地域の絆

四街道高等学校野球部が取り組む、朝のごみ拾い活動
四街道駅へと急ぐ通勤・通学の人々の傍ら、ごみ袋を手に歩く高校生たちがいる。彼らは四街道高等学校野球部の部員たち。甲子園出場を目標に日々厳しい練習に励む彼らが、練習前に取り組んでいるもう一つの活動―それは「ごみ拾い活動」。同校野球部で清掃リーダーの髙山弘さんと指導する古谷健監督に話を聞いた。

【環境月間とは?】
国連は、6月5日を「世界環境デー」として定めており、国や県でも6月を「環境月間」として定め、環境についての関心や理解を深めるためのさまざまな事業が行われています。

監督:古谷健さん
野球部:髙山弘さん(3年生)清掃リーダー

○地域から愛されるチームへ
ごみ拾い活動は3年前、古谷監督の「地域から愛されるチームになるために、野球部という組織として地域にできることを考えてみよう」という提案をきっかけに、部員たち自身が考え、始めた取り組みだ。野球部では、清掃リーダーをはじめ、花壇係やグラウンド整備リーダーなどさまざまな役割を設け、組織として責任を持って動くことを大切にしており、ごみ拾いの日時や場所も、部員自ら決めて実施している。
活動は主に平日朝7時〜8時の間の15分ほど。四街道駅周辺や中央公園を中心に、文化センター、市役所周辺へも足を運ぶ。部員とマネージャー、総勢99人が小さなごみ袋を手に、歩道や植え込みの間に落ちているたばこの吸い殻や空き箱、空き缶、ペットボトルなどを拾い集める。「多いときは45リットルの袋が2ついっぱいになることもあります」と清掃リーダーを務める髙山弘さん。
活動頻度は1〜2週間に1度程度。また、ふるさとまつりなど大きなイベントや、台風の後など、ごみが増えそうな時にはリーダーの判断で急遽実施されることも。

○「やらされていた」活動が「自分たちの意志」に
髙山さんによると、最初の頃は「なぜやるのか分からない」と思っていたが、活動を続ける中で、意識が変わった。今では「街にごみが落ちていると、自然と体が反応して拾ってしまうんです(笑)」と話すほど。
自分たちの行動が地域を変えているという実感も。「駅前などでごみを拾っていると地域の方から『ありがとう』と声をかけられることも増えました。自分たちがやめたらまたごみが増えるかもしれない。だからこそ、この活動を下の世代にも引き継いでいきたいです」と髙山さん。

○監督の想いと「我が歴れき」
古谷監督がごみ拾いの意義に気付いたのは、東日本大震災のボランティア活動の時。がれきのごみを拾う中で、地域の方から「がれきは〝我(が)(の)歴(れき)(史)〟だよ」と教わり、行動の奥深さを知ったという。「ごみ拾いというものは意味のある行動です。ひとつ拾えば、ひとつだけきれいになります。活動を通して『目配り』『気配り』『心配り』を大切にしてほしい」と話す。
「今は意識して行っている活動も、将来〝無意識〟にできるようになったら本物だと思います。野球だけでなく、人間力を高めることが部の目標」と古谷監督。

○野球の実力だけではない真の「強さ」を育む活動
四街道高等学校野球部の朝のごみ拾いは、ただの美化活動ではない。地域の一員としての誇りと責任を持ち、目の前の小さなごみに気付き、手を伸ばす「心の力」を育てる場でもある。監督や部員たちが何よりも大切にしているのは、「自主的に行動に移す力」。大人になったとき、「誰もができるけど、実は簡単にはできないこと」が自然にできる人になってほしい―そんな願いが、この活動には込められている。彼らが拾い集めるのは、街のごみだけではなく、地域とのつながりを深め、人として成長するきっかけでもある。
7月5日(土)から始まる第107回全国高等学校野球選手権千葉大会。この夏、グラウンドで熱戦を繰り広げる彼らの背中には、地域の方々の温かな声援がきっと届いていることだろう。
地域に応援され、愛されるチームへ。四街道高等学校野球部の挑戦は、これからも続く。