- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県印西市
- 広報紙名 : 広報いんざい 令和7年4月1日号
■板碑(いたび)-石で造られた供養塔-
日本では仏教が伝来して以降、人々は信仰に基づいて数多くの仏塔を造っており、その素材は木、石、土などで、規模も大小さまざまです。
なかでも中世といわれている鎌倉時代から室町時代(1200年代後半から1500年ごろ)にかけて、「板碑」という石で造られた供養塔が数多く造られました。板碑は「板石塔婆(いたいしとうば)」ともいい、石を板状に加工し、梵字(ぼんじ)で仏や菩薩などの本尊を示す種子(しゅじ)、造立の趣旨、年号などを刻みます。
その中で、旧武蔵国・秩父地方を産地とする緑泥片岩(りょくでいへんがん)を使ったものを「武蔵型」といい、筑波地方を産地とする黒雲母片岩(くろうんもへんがん)で造られたものを「下総型」といいます。これらの石は千葉県では採取できないため、単に信仰だけでなく、物の流通を知る資料としても注目されています。下総型は利根川下流域に多く分布しており、印西市域はこの2つの型式が交差している地域で、市史編さん事業では中世編の編さんにあたり、板碑に注目し調査を進めています。市では市指定文化財に4件の板碑を指定しており、また、龍腹寺の境内からは、昭和47(1972)年に破片を含む871点という大量の板碑も発見されています。
板碑の調査は近年、3次元計測(フォトグラメトリ)による記録で調査時間の短縮が図られ、調査によって板碑に与えるダメージも軽減することができるようになりました。
板碑の持つ情報は、当時の人々の信仰や宗教、流通や経済などを知ることができる、古文書にも劣らない貴重な歴史資料といえるでしょう。