文化 先人たちの足跡No.305

■栄町に伝わるヘビの昔話「眼助大師」(五)
(前号のあらすじ…名主の娘「お八重さん」との別れをおしみながら、大阪での巡業を終えた眼助のもとに悲しい知らせが届きます。)
眼助は、団十郎にその理由を話し、許しを得ると、すぐに名主の家まで大急ぎで行きました。名主の旦那は大変喜んで「よく来てくれました。ありがとうございます。どうか一目だけでも遭ってやって下さい」と棺桶の蓋を開けてくれました。
すると、不思議なことに、なんだか分からないが棺の中からユラユラと上がってきたものがありました。よく見ると、それは白蛇でした。その白蛇は眼助の首ヘグルグルと七回り半も巻き付いてしまったのです。
「助けてくれ」と眼助は怒鳴ろうとしたのですが、どうしても声が出ませんでした。回りの人たちは、その異変に気付き「眼助さん、どうしました」と、おどおどして声を掛けました。他の人には、全く白蛇の姿は見えなかったのです。
眼助は、声が出なくなってしまったので、もう芝居をすることはできません。そこで、四国八十八か所のお遍路をして、お大師さまのお力におすがりすることにしました。一度だけでなく、何度も続けました。そして、七度目のお遍路の時のことです。四国十九番大師の少し手前まで来た時、向こうから立派な坊さんが、やってきて「若い身すらで、よく信心しますね。今日は、いの一番に十九番大師の護魔壇の上へ行って、南無大師遍照金剛と十回唱えなさい。そうすれば貴方の首に巻き付いた白蛇は取れるでしょう」と教えてくれました。眼助は坊さんに言われた通りにしました。すると、本当に蛇は取れて声が出せるようになりました。その坊さんは、お大師さまの化身だったのでした。
眼助は、その後三度のお礼廻りをして、合計十度のお遍路をしました。そして、最後にその写しを戴いてきて、村人と共に布鎌に十九番大師のお堂を建てて、お祀りしたのでした。(完)

問合せ:生涯学習課文化財班
【電話】95-1112