文化 蔦重と江戸文化

■その九 蔦重ゆかりの人物(7) 曲亭馬琴(きょくていばきん)
曲亭馬琴は、明和4年(1767)生、嘉永元年(1848)没。長編小説である「読本(よみほん)」の第一人者として有名ですが、最初に執筆した読本『高尾船字文(たかおせんじもん)』は、寛政8年(1796)、蔦重から刊行されたものです。馬琴は寛政3年(1791)、山東京伝(さんとうきょうでん)の紹介で蔦重の店で手代(てだい)として働き信頼を得ていました。同5年には馬琴の行く末を案じた蔦重の口利きで下駄屋に養子として入ることになり、蔦重の店を出てその後執筆活動に専念しました。馬琴は、蔦重のことを「吉原に遊びて産を破るものは多けれど、吉原より出て大賈(たいこ)(大商人)になりたるはいと得がたし。」と伝えています。

●『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)』
馬琴の代表作『南総里見八犬伝』は、文化11年(1814)に刊行を開始、その後28年をかけて完結した106冊にもわたる超大作です。「読本」というジャンルを不動の位置に押し上げ、また歌舞伎や浮世絵など他の文化に影響を与え、後世人形劇や映画などさまざまなエンタメに昇華されています。物語の発端こそ安房国(あわのくに)(現、千葉県南部)ですが、中盤にさしかかると舞台は江戸近郊に移ります。そこでは、不忍池、浅茅(あさじ)が原(はら)、隅田川を望む位置に立つ架空の建物「対牛楼(たいぎゅうろう)」など、台東区内の風景も物語に登場し、根岸に住んだ絵師・柳川重信(やながわしげのぶ)の描く美しい挿絵なども散りばめられています。

問合せ:
文化振興課大河ドラマ活用推進担当【電話】5246-1118
連載の内容については中央図書館郷土資料調査室【電話】5246-5911