- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都台東区
- 広報紙名 : 広報たいとう 令和7年10月20日号
■その十 蔦重ゆかりの人物(8) 十返舎九(じっぺんしゃいっく)
十返舎一九は、明和2年(1765)生、天保2年(1831)没。寛政6年(1794)、大坂から江戸に出て蔦屋重三郎宅に身を寄せ、翌年黄表紙(きびょうし)を発表以後、洒落本(しゃれぼん)、滑稽本(こっけいぼん)、読本(よみほん)、咄本(はなしぼん)、往来物(おうらいもの)などにも筆を染め、蔦重に見いだされた作家の一人です。
一九は、「弥次(やじ)さん喜多(きた)さん」で有名な『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』で名声を得、文化10年(1813)、新しい旅行案内記のシリーズ『金草鞋(かねのわらじ)』を出します。これは、数巻分の草双紙(くさぞうし)を1冊に合冊した合巻(ごうかん)というスタイルの書物で、これにより長編小説が可能になりました。
この『金草鞋』初編末尾には、作品中に登場する方言と意味を簡潔に説明した部分があり、「べらぼう」の語が登場します。原文は、「ぐだま べらぼうといふにあたる」とあり、どちらも愚かな人の意味。本文中で「ぐだま」は、上野寛永寺の大師堂前において「よつはらひ(酔っ払い)のぐだまどもだア」と使われています。将軍をお守りする寛永寺境内での酔客の狂態という、いささか不遜(ふそん)な場面ですが、当時の風俗を表しているものとして興味深く感じられます。
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