- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都渋谷区
- 広報紙名 : しぶや区ニュース 令和7年(2025年)11月1日号
◆「当たり前」になるように、制度と風土の両輪を変えていく
◇性的マイノリティーに関する取り組みの中で、今も感じている課題はありますか?
永田:最近、性的マイノリティーの人たちの存在を否定する言葉を耳にすると、当事者のみならず、家族や友人などの当事者の周りにいる人たちも深く傷ついてしまうという話を聞くことが増えました。まさに今、「自分の家族や友人、同僚に性的マイノリティーの当事者がいたら、あなたはどうしますか」という質問に対する意識が問われているのだと思います。性的マイノリティーの人たちは、「いる・いない」ではなく、「見えていないだけ」なのです。遠い存在なのではなく、意外と近くに困っている人がいるという意識を持つ人が、今後どれだけ増えていくかが課題解決の鍵になると思います。
◇今後の展望を教えてください。
永田:渋谷区役所での貴重な経験と学びを、行政や企業に伝えることで、組織の「制度」と「風土」の両輪をアップデートするお手伝いを続けていきます。団体の皆さんにはいつも、「世の中を変えていくためには、制度と風土の両輪が必要」とお伝えしています。制度があっても、それを安心して利用できる風土がなければ意味がありません。制度を生かすためには、そこに認識が伴っていなければいけません。風土を変えていくための一歩は、当事者を「いないことにしない」ということです。そのためには、自分自身の日々の言動を意識することが大切だと考えています。もちろん、それは学校も例外ではありません。渋谷区の調査では、区内の中学2年生の約7.9%が性的マイノリティーに該当しているという結果になりました※3。学校でも、大人たちが「性的マイノリティーは当たり前に存在するクラスメイト・同僚」という意識を持てば、子どもたちの不安や偏見を取り除いていけると信じています。
※3 令和2年度男女平等および多様性社会推進に関する調査(渋谷区)より
◇区民の皆さんにメッセージをお願いします。
永田:パートナーシップ証明制度は、渋谷区がこの10年間で発信した大きなソーシャル・イノベーション(社会課題を解決するための新たな取り組み)であり、区の基本構想で掲げる未来像「ちがいをちからに変える街。渋谷区」につながっています。区民の皆さんには、渋谷区が日本で初めてパートナーシップ制度を導入した自治体であることに誇りを持っていただき、これからも多様性社会を推進する一員であり続けていただきたいと願っています。
《「渋谷のラジオ」で放送中!》
永田龍太郎さんへのインタビューは11月4・11日に「渋谷の星」で放送します。
■パートナーシップ証明制度10周年を記念したイラストを制作しました
表紙に写っているイラストは、制度の意義と成果を広く伝えるために渋谷インクルーシブシティセンター〈アイリス〉が制作したものです。国籍・年齢・性別などに関係なく、性的マイノリティーを含むさまざまなカップルを多様な愛の形として可視化し、祝福したイラストです。
制作には、長年にわたり多様性や共生をテーマに作品を手掛けてきたイラストレーターのmoriuo氏をお迎えしました。moriuo氏は平成11(1999)年よりイラストレーターとしての活動を開始し、LGBTQメディアを中心に、恋愛、家族、子育てなどをテーマに温かなタッチの作品を描いてきました。表紙の作品「明日」は、制度の10年の歩みを振り返るとともに、未来に向けた希望とつながりの様子を描いた、制度の意義を伝える作品となっています。
「ノーマン・ロックウェルのようにLGBTQの人々の日常を描きたい」という思いのもと、企業での展示・講演などを通して、さまざまな形で社会に多様性を尊重することの大切さを伝えています。
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