文化 青梅市の文化財探訪2 「国宝 円文螺鈿鏡鞍 一具」

■国宝 円文螺鈿鏡鞍 一具
市文化財保護指導員 御手洗望

ウマ(馬)は元々日本列島に生息しておらず、古墳時代に大陸から持ち込まれ、当時の馬具の発掘から、はじめから乗馬に利用されていたと考えられています。乗馬のため馬に装着する道具(馬具)は、轡(くつわ)(馬の口に噛ませ手綱と繋ぐ金具)、鞍(くら)(馬の背に載せ騎手が跨る)、鐙(あぶみ)(鞍の両脇に吊(つ)るし騎手が足を掛ける)、鞦(しりがい)(馬の頭・胸・臀(しり)に架けて馬具を固定する紐:面繋(おもがい)・胸繋(むねがい)・尻繋(しりがい)の総称)などで構成されます。平安末期から鎌倉時代になり武士の馬の利用が進み、新しく工夫された馬具がつくられました。
武蔵御嶽神社に伝わる円文螺鈿鏡鞍(えんもんらでんのかがみくら)は、そうした鎌倉時代の馬具の様式を備えた宝物です。鞍は黒漆の地に円文(えんもん)(蛇の目紋)の螺鈿(らでん)が施されています。螺鈿は、夜光貝など貝殻片内側の真珠層の光沢を利用した装飾で虹色に輝きます。また、鞍は金色の金覆輪(きんふくりん)に縁どられ装飾されており、「金覆輪円文螺鈿鏡鞍」という名前でも知られています。鐙は騎射で体を安定させるための舌長(したなが)鐙、轡には飾り金具の杏葉(ぎょうよう)が付いています。こうした木製・金属製の馬具に加え、繊維でできた鞦等もそろっています。
鎌倉時代の馬具が一式揃う国内唯一の例であり、また、工芸品としての価値が評価され、一連の馬具と共に円文螺鈿鏡鞍は大正7(1918)年に国宝に指定されました。現在、武蔵御嶽神社の宝物殿で公開しています。

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