- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県平塚市
- 広報紙名 : 広報ひらつか 令和7年6月第1金曜日号
◆時間の流れを表現
『サギ子』や『フナ子』をはじめとする作品の一部には、川や里山などの現実にある身近な自然風景に、非現実的な情景が描かれています。「基本的に、一つの作品に描かれている複数の人は同じ人物です。同じ人物を何人も描いているのは、人そのものを描くというより、時間の流れを表しています」と解説します。目に見えない「時間」を視覚化するという矛盾への挑戦は、新たな発見につながると意気込みます。
◆2次元を3次元に
原さんは平成26年から立体作品にも取り組み始めました。「画家なので、普段は油絵という2次元の世界を描いていますが、その延長線上として、3次元の立体作品を作ったら面白いんじゃないかと思ったんです」と話します。
磁器で立体作品を手掛ける原さんは、回転台の「ろくろ」を使わず、指先だけの「手びねり」で形を整えます。「磁器は上絵付けという方法で色を付けていきます。上絵付けは色を重ねられないので、油絵と同じく一層で描くんですよ」と自身の油絵との共通点を語ります。
『月』(右写真・2023年磁器 作家蔵・高さ38センチメートル・直径44センチメートル)は、原さんが手掛けた代表的な立体作品の一つ。ここまで大きな手びねりの磁器作品は他にあまりないのではないかと話します。
「『月』は、絵と同じ発想で、球体そのものに油絵の具で光と影を描きました」。立体作品をキャンバスと捉えて描く、画家ならではの着想が垣間見えます。油絵・磁器を問わず、筆の跡が残っているのも原さんの作品の魅力です。
※写真は本紙をご覧ください。
◆楽しんで鑑賞して
企画展では、大人はもちろん、子どもも楽しんでほしいと原さん。「自分の感覚に素直になって、感じたありのままを描いているので、皆さんにも同じような感覚で見てほしいです」と話します。「美術作品を鑑賞した時、作品がよく分からないというのも一つの立派な批評です。自分の感覚に素直になって作品を見て、楽しんでもらいたいです」と思いを語ります。
◆美術館で魅力を感じて 巧みな筆遣いをご覧あれ
「過去に市外で開かれた展示会などで、原さんの作品に興味を持っていました」と語る、市美術館の江口恒明学芸員。今回の企画展を担当し、1年半ほど前から原さんと準備を進めてきました。企画展の内容を決めるに当たって「平塚市出身で、平塚の風景をモチーフにした作品もあったので、美術館を訪れる皆さんに、作品をより身近に感じてもらえるのではと考えました」と原さんに声を掛けた理由を話します。
本企画展では、大きいものは縦259センチメートル・横162センチメートル、小さいものは縦19センチメートル・横13・5センチメートルと、大小さまざまな作品を約75点展示します。「大きい作品は迫力がありますし、小さい作品もサイズ以上の存在感がありますよ」と展示作品の魅力を語ります。
油絵の具を重ねずに描く場合、キャンバス上で色味や筆遣いの微調整はできません。「一発勝負で描き上げられるのは原さんの技術があってこそです」と江口学芸員。他にも、モチーフとなる場所で得た感覚を大事にし、表現していると評します。「色は軽快で明るい作品が多いです。また多くの作品に使われている青や緑は、日本画の色にも近く、なじみのある人もいるかもしれません」と話します。「一層描きならではの筆跡は、実物でしか見られません。ぜひ美術館で実物を鑑賞して、魅力を感じてほしいです」
◆原良介 サギ子とフナ子 光のそばで
日時:月曜日と7月22日、8月12日の火曜日を除く、6月14日(土)~9月15日(祝)。午前9時30分~午後5時
場所:展示室2
費用:900円、高校生・大学生500円
◆アーティストトーク
日時:7月19日(土)、8月24日(日)、午後2時~2時40分
場所:展示室2
持ち物:観覧券
◆ワークショップ 自分のわっかを作ろう
新聞紙で作った輪に、髪や服の色を取り出して着色します。回して遊べる輪を楽しく作りませんか。
日時:8月9日(土)・10日(日)・11日(祝)、午前10時〜午後3時
対象:小学生以上の方
問い合わせ:美術館
【電話】35-2111