文化 [特集]再認定!箱根ジオパーク ~過去を知り、未来を考える~(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県箱根町
- 広報紙名 : 広報はこね 令和7年3月号
観光地として有名な箱根町ですが、観光地であるだけでなく、あなたの立っている場所にも古のドラマが広がっています。今月は箱根ジオパーク特集。ジオパークについて考えてみませんか。
■箱根は生きた教科書
箱根といえば、温泉や美しい山々、そして芦ノ湖の絶景を思い浮かべる人が多いでしょう。でも、その風景がどのように生まれたのかを考えたことはありますか?実は、箱根の大地には長い歴史が刻まれた“物語”が広がっています。つまり、箱根は観光地であるだけでなく、大地の歴史を感じられる“生きた教科書”なのです。
■いつもの「箱根」をもっと魅力的に
「でも、そんなことを知らなくても、箱根は楽しめるよね?」と思うかもしれません。たしかに、知らなくても十分魅力的です。でも、その背景にある物語を知ることで、箱根の見え方はまったく変わります。今月はジオパークの世界をのぞいて、箱根の魅力に迫りましょう。
■ジオパークとは?
ジオ(地球)に親しみ、ジオを学ぶ旅、ジオツーリズムを楽しむことのできる場所です。具体的には山や川をよく観察し、その成り立ちと仕組みに気づいたり、そこから生態系、人の生活とのかかわりを考えたりすることができます。つまり〝地球を丸ごと考える場所〟、それがジオパークです。
■温泉もジオパークの一部
多くの人が一度は入ったことのある箱根の温泉も火山活動による地球の恵みなのです。
ジオパークは、貴重な地形や地質を含むエリア全体を保護・活用するもので、温泉はその地域の地質の特徴を反映したものの一つです。
■箱根ジオパークの始まり
箱根ジオパークは、箱根火山を中心とした箱根町、小田原市、真鶴町、湯河原町、南足柄市で構成されています。2007年に箱根火山が「日本地質百選」のひとつに認定されたことをきっかけに、ジオパーク認定に向け活動を開始。2012年に念願の日本ジオパークに認定されてから現在まで地域の課題解決に取り組んでいます。
■箱根ジオパークの主な課題
・少子高齢化や人口流出で地域のつながりが薄れること
・地域の大切な資源(自然、文化、伝統など)の価値に気づかれないまま失われる恐れ
・箱根火山や地震などの災害への備え
■箱根ジオパークの課題解決に向けたビジョンとテーマ
《VISION(ビジョン)》
住むまち訪れるまち
地域を守り歩み続ける
箱根ジオパーク
~海・山・人のハーモニー~
《テーマ》
「東と西をつなぐ歴史のみち」
「北と南をつなぐ自然のみち」
◇ビジョン実現のための4つの要素
01.守る
~心休まるまち~
箱根火山と共生しながら、住む人、訪れる人、誰もがその恩恵を大切に、自然資源を守っていくまちを目指す
02.繋げる
~交流あふれるまち~
この地域に住まう人同士が交流、連携することで、歴史や文化を未来に繋げ、また、地域の新たな発展に繋げる
03.伝える
~魅力を楽しく語れるまち~
地域の魅力を誰もが知り、地域への愛着と誇りを持つとともに、訪れる人に自ら伝えたくなるまちを目指す
04.活かす
~訪れるひとが「ならでは」の体験ができるまち~
この地域ならではの豊かな資源を通じ、訪れる人が、楽しみ、味わい、癒され、また行きたい、移り住みたいまちになる
■カコ・イマ・ミライを知る
《[カコ]箱根の成り立ち》
箱根火山ができる前、島であった現在の伊豆半島と本州の間の海にたまった堆積物が、箱根火山の土台を作った。
◇約40万年前
箱根火山の活動が始まり、23万年~13万年前には大規模な噴火を繰り返しカルデラと呼ばれる巨大なくぼ地が形成。箱根外輪山はこの時期に形成された。
◇約13万~8万年前
カルデラの中に屏風山や浅間山が形成。これらは中央火口丘と呼ばれる。およそ6万年前の最大級の噴火では火砕流が横浜まで届いた。
◇約3,000年前
4万年前以降、中央火口丘に神山や駒ケ岳が追加。
約3,000年前に神山の一部が崩れ、早川をせき止めたことで芦ノ湖ができた。
◇現在
箱根火山は約40万年におよぶ長い年月をかけてたくさんの山が集まって形成されてきたが、現在も火山活動を続け、進化している。これほど複雑な地形を生んだ箱根火山は、人生経験豊かな火山とも言えるだろう。
《[イマ]ここにしかない魅力》
◇食:風土に根ざす食文化
・黒たまご…箱根火山の地熱が生んだ名物
・ワカサギ…火山活動で生まれた芦ノ湖に棲む箱根の特産品
※平成21年3月1日に町の魚に制定
・豆腐・そば…火山地帯特有の湧水を活かして作られ、風味が豊かに
◇景観:身近な風景もよく見てみると…?
・須雲川(畑宿)…地下深くのマグマが地表を目指して移動をするときにできた通り道「岩脈」が見られる。
・堂ヶ島(宮ノ下)…箱根火山ができるはるか前の約400万年前に海でできた地層を見ることができる。
・飛龍の滝(畑宿)…神奈川県下最大級の滝。
12万年前に噴火した溶岩を見ることができる。これは箱根火山の中央火口丘の溶岩である。
◇モノ:豊かな植生と道が生んだ箱根寄木細工
箱根の山々が海から来る湿った空気を受け止め、たくさんの雨が降ること、さらに複雑な箱根火山の地形があることで豊かな植生が生み出されている。
旅人が山を越えるこの場所に道ができたことで、寄木細工というお土産の文化が発展した。
◇温泉:温泉のデパート
箱根の温泉には大きく分けて二つのでき方がある。
一つは火山活動で発生した熱が地下水を温めて湧出したもの。もう一つは、地表にある水と火山性の蒸気が混ざった温泉だ。
さらに、地質の構造が複雑なため、さまざまな泉質の温泉が楽しめることは箱根の温泉のポイントである。
《[ミライ]大地から考える未来のこと》
この大地に含まれる過去の記録は、これからの地球の未来や社会の抱える課題を解決するためのヒントがたくさん隠されています。ジオパークではその価値を伝えるための活動や、守っていくための活動を様々な立場の人(ステークホルダー)と共に行っています。
※詳細は、本紙P.4~P.5をご覧ください。