- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県箱根町
- 広報紙名 : 広報はこね 令和7年3月号
■地域の魅力と可能性を語る
箱根ジオパークに携わっている学芸員の二人に魅力や課題、これからについて話してもらいました。
「住んでいる地域の方は、その地域の専門家だと思ってます。」荒木藍
「身近な自然や文化に目を向けることで、地球のことを考えていきたいです。」山川隆良
◇まず初めにお二人の普段の活動について教えてください。
荒木:箱根ジオパークの2市3町をまとめる事務局に、学芸員として所属しています。専門は社会と科学を繋げるサイエンスコミュニケーションです。
ジオパークを「伝える」こと、人と人や自然と人を「繋げる」ことに奮闘中です。昨年からはSNSを使った広報を開始し、魅力的な場所や人の紹介をしています。これから、ファンを増やしていきたいと思っているので、ぜひ登録をお願いします。
山川:大涌谷にあります箱根ジオパークの拠点施設、箱根ジオミュージアムの学芸員です。専門は植物の化石について調べる古植物学と、博物館について考える博物館学です。、自然や文化全般に興味を持って活動しています。箱根ジオミュージアムでは自然史の調査・研究のほかに、展示の制作や学校への訪問授業などを行っています。
◇箱根ジオパークの魅力を教えてください。
山川:箱根ジオパークは日本で一番首都圏に近いジオパークであることが強みの一つだと思っています。観光客だけでなく研究者や専門家がアクセスしやすいことで、たくさんの研究論文が書かれています。
荒木:アクセスしやすいだけでなく、定住している研究者の数がすごく多いことも魅力です。
箱根町の学芸員や、ジオパークに関わる温泉地学研究所や生命の星地球博物館の研究者も入れるとかなり多いです。他のジオパークだと、エリア内に大きな博物館や研究所があることは少ないです。
山川:また既に観光地として有名であるため、ジオパークについて知らない方も自然と箱根ジオパークに足を踏み入れています。箱根ジオパークはジオパークについて知るきっかけになる「玄関口」になれるポテンシャルがあり、期待されています。
荒木:それから、箱根ジオパークが箱根町だけではなく、小田原市、湯河原町、真鶴町、南足柄市の2市3町と広域で行っている点も大きな魅力です。
山川:自然史の分野の人間からすると、行政区分で制限されず広く協力していける環境として箱根にジオパークが存在するというのは、すごく魅力的だと思います。
◇一方で課題はどんな点ですか
荒木:いくつかの学校では、火山実験やジオパーク絵本の読み聞かせなどの素晴らしい取り組みがあるのですが、これらが他の学校でもできれば良いなと思います。まさに、ここで広域連携の強みが出ると思うのですが、まだ広がっていない現状があるのも事実です。
山川:私も学校の授業で地層の観察をすることがありますが、このように例えば各小学校で自分の地域について学んだことを、箱根町全体で、さらには箱根ジオパーク全域の学校と発表しあえる環境が用意できればなと思っています。
荒木:ジオパークとは地域の盛り上げや課題解決などのツールの一つだと考えてもらうとよいかもしれません。もちろん、私たちだけの力では活動はできないので、地域の方のお手伝いができればと思っていますので、ぜひ困っていることややりたい活動があれば、声をかけてもらえれば嬉しいです。
◇今回の再認定で評価されたことは?
荒木:今回の認定では、登山道の補修活動や図書館を使った箱根ジオパークオリジナル絵本の読み聞かせイベント、自然災害伝承碑の登録活動などが評価されました。
山川:これらの活動の多くは、箱根ジオパークのサポーター活動でも取り上げています。サポーター活動ではジオパーク活動のお手伝いをしつつ地域について学んでいます。もしよければ覗いてみてください。
また、防災の普及活動が評価されたのは嬉しいですね。ジオミュージアムの展示や、学校への訪問授業の機会でも強調しているところの一つです。
◇最後に一言
山川:ジオパークは地球全体の課題に対してどのように活動していくか考える場所ですが、身近なことから理解し知ってほしいと思います。まずは、自分が住んでいるところを考えてほしい。考えると、地域が一つで成り立っていることはなく、他との相互作用で自然も文化も地域は成り立っています。それを知ることでさらに自分の地域についての知識も増え、魅力が広がります。なので、まず、身近なことから知り、ゆくゆくは、全体的なことに繋がればいいと思います。
荒木:私は、そこに住んでいる住民が地元の専門家だと思っています。つまり、地元に〝愛〟があり、「こんないいところがあるんだ」という、意識があれば、誰にでも魅力=価値を伝えることができます。
それを観光客だけでなく、身近な人、例えば自分の子どもに伝えられることで、その子どももどこかで伝えることができます。そうすることによって、どんどん愛着をもつ関係人口が増えれば、最終的に箱根を守っていくことができると思っています。
■函嶺白百合学園 箱根ジオパーク習字展を開催!
箱根寄木細工に関する言葉や寄木に用いられる樹木の名前を題材にした作品を展示しますので、ぜひお越しください。
日時:3月23日(日)~5月6日(火)
場所:箱根ジオミュージアム 無料ゾーン
照会先:箱根ジオミュージアム
【電話】83-8140