文化 続・ひみ 未来遺産 第40回

■箱御膳からチャブ台へ
~丸い形が生んだ家族団らん~

昭和20年代頃までの各家庭の食事風景には、箱御膳がありました。箱御膳は杉材の箱状の入れ物で、家族一人ひとりの分があります。その中に自分用の箸と食器を納め、食事の時は蓋を裏返して御膳の上に置き、その上に食器を並べました。また、箱御膳の食事の時代は、席順も厳しく定められ、当主は上座、それから長男・次男、女衆は土間に近い下座に座りました。
昭和30年代以降になると、チャブ台を使うのが主流になりました。チャブ台は脚を折り畳める食卓で、円形のものが一般的でした。周りに正座し、食事が終わって不要になれば、脚を畳んで片づけます。そのため、特に居住空間に恵まれていない町中の住宅で普及しました。
家族全員で囲んで食事をする丸いチャブ台は、上座下座も関係なく、食事中の会話が弾みます。また、主婦が縫物や繕い仕事をする作業台や子どもの学習机としても使われ、チャブ台の周りは生活の中心となり、家族団らんを楽しむ場になりました。
最近では洋式のダイニングテーブルが普及し、チャブ台はアニメなどの「チャブ台返し」でしか知らない人が多いと思います。博物館の移築民家の広間には箱御膳を、昭和30年代コーナーにはチャブ台を展示しています。食事風景の移り変わりをぜひ博物館でご覧ください。
(博物館 事務員 重原美代子)

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