健康 地域医療最前線!公立河北中央病院赤ひげ通信

■脂肪肝について
内科 川口和紀
日本では生活習慣病が増加傾向にあります。これは、食生活の欧米化や肥満によるもので、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの疾患を伴うこともあります。生活習慣が発生に関与すると言われる大腸がんも増加しており、検診での便潜血検査がすすめられています。
肝疾患の原因として、これまでアルコールや肝炎ウイルスによるものが多いとされ、中でもB型・C型肝炎ウイルスは、肝硬変や肝がんを引き起こす大きな原因です。しかし、近年は治療効果の高い抗ウイルス剤が開発され、今後はウイルスが原因としない慢性肝疾患(脂肪肝を含む)が着目されています。
脂肪肝による肝障害や慢性肝疾患は、これまでNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)のようにアルコール量が少ない患者における診断名となっていました。しかしながら、近年においては生活習慣病に関連した脂肪性肝疾患として、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)、MASH(代謝異常障害関連脂肪肝炎)という病名に変更されました。
肝臓に脂肪が沈着する状態が脂肪肝ですが、脂肪がたまっていても肝障害を起こさない状態の方もいます。一方で、長期間肝障害を引き起こして慢性肝疾患が進行し、肝硬変、肝がんに至る場合もあります。
肝機能が低下すると倦怠感や黄疸などの症状が表れますが、症状が全く出ないまま進行することも多く、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。それゆえ慢性肝疾患が進行する程度を定期的に調べる必要があります。病気が進行すると肝臓の線維化がみられますが、線維化マーカーは頻繁に調べる項目ではありません。しかし、よく測定される項目には、肝機能と血小板数があります。これは肝臓の線維化との関連があるとされ、FIB-4indexという指標が参考になります。また画像検査では、腹部超音波検査やCT検査で肝臓の異常を確認し、最近では超音波の画像から肝臓の線維化を数値化することができます。
以上のように採血や画像検査で肝臓の状態を詳しく調べますが、肝機能値の一つであるALTが30以上で肝疾患の早期発見・早期治療のきっかけになるということが日本肝臓学会の「奈良宣言」において提唱されました。また、がんのバイオマーカーの研究も盛んに行われており、将来的には重篤な慢性肝疾患を引き起こす患者が予測可能と言われています。