- 発行日 :
- 自治体名 : 石川県津幡町
- 広報紙名 : 広報つばた 2025年10月号
■新型(加熱式)タバコについて
呼吸器内科 中瀬啓介
近年、従来の紙巻きタバコから健康被害が少ないとされる加熱式タバコへの移行が急速に進んでいます。加熱式タバコはタバコ葉の成分を加熱して吸引するもので、現在、全タバコ使用者の約26%まで増加しています。煙が出ないこと、衣服や髪に臭いがつきにくい、歯に着色しないといった点が、特に若年層の利用を後押ししているようです。
紙巻きタバコではタールや一酸化炭素、ベンゼンといった有害物質、またタバコ特異的ニトロアミンなどの発がん物質が多く発生しますが、加熱式タバコからはその発生量が少ないとされています。これにより、「有害物質90%削減」といった宣伝文句が使われ、禁煙を目指す過程や減煙方法としても利用されることが増えています。しかし、ニコチン量はほぼ同等であり、依存性が軽減されているわけではありません。その結果、紙巻きタバコよりも使用頻度(本数)が増える傾向があるという報告もあります。
さらに、加熱式タバコにはプロピレングリコールやグリセロールなどの有害成分も含まれており、数か月の使用で肺障害が生じた事例も報告されています。動物実験では、肺気腫の発生、炎症性サイトカインの上昇、肺血管傷害が確認されています。また、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者由来の細胞実験では、健常者由来の細胞と比較して、プロピレングリコール曝露による影響がより顕著であり、長期使用が紙巻きタバコと同様の肺気腫リスクを引き起こす可能性が示唆されています。
加熱式タバコは煙が見えにくいため、受動喫煙のリスクが低いと思われがちですが、実際には有害成分を含んだ呼気が周囲2メートル以上に届くことが確認されています。1850年代に紙巻きタバコが普及し、1950年代には喫煙と肺がんの関連が示唆され、2000年代には低タール紙巻きタバコも安全ではないと証明されています。加熱式タバコが登場してからは日が浅く、日本呼吸器学会によれば、紙巻きタバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的でも使用は推奨されないとしています。
自分自身や周囲の大切な人たちの健康を守るため、改めて喫煙について考えることが大切です。喫煙歴があり、現在咳や痰の症状がある方は、早めに相談ください。