健康 おしえてドクター 34

■肺がんに対する外科治療の進歩
肺がんは、亡くなる方が最も多い「がん」です。CT検診の普及に伴い早期発見が増えており、より負担の少ない「低侵襲(ていしんしゅう)手術」や肺を小さく切除する「縮小手術」の研究が進んでおります。

◇低侵襲手術の進歩
約30年前までは、大きな傷で場合によっては肋骨(ろっこつ)を切る「開胸(かいきょう)手術」がほとんどでしたが、ここ10年ほどで、複数の小さい傷で手術する「胸腔鏡下(きょうくうきょうか)手術」が主流になっております。
さらに、数年前からは手術支援ロボットを用いた「ロボット手術」や、1カ所のみの小さい傷で手術を行う「単孔式(たんこうしき)手術」へと進化・普及し始めました。
これらの手術は、いまだ標準的ではありませんが、「胸腔鏡下手術」に比べて「ロボット手術」ではより精密な手術に、「単孔式手術」ではより患者さんの負担軽減につながるとされています。

◇縮小手術の進歩
肺は左右合わせて5つの部屋に分かれており、これを「肺葉」と呼びます。その「肺葉」はさらに複数の小部屋に分かれ、これを「肺区域」と呼びます。従来、肺がん手術は「肺葉」の切除が主流でした。しかし、2020年ころから、日本発の研究成果が発表され始め、早期肺がん患者さんの一部に対して、「肺区域」の切除や辺縁の一部を切除する「部分切除」などの「縮小手術」でも同等の結果を得られることが判明しました。切除する肺をなるべく減らす「縮小手術」は、「呼吸の機能」の温存が可能で、手術後の息苦しさの軽減が期待できます。
これらの手術は、病院設備や呼吸器外科の方針によって導入状況が異なります。
当院では、「単孔式胸腔鏡下手術」や「縮小手術」を積極的に導入しており、他の手術方法についても相談いただくことが可能です。

■市立甲府病院外科 松岡弘泰(まつおかひろやす)ドクター
・平成19年 山梨医科大学(現山梨大学医学部)卒業
・山梨大学医学部附属病院などを経て、令和2年から当院勤務。現在は外科科長
・日本外科学会専門医・指導医、呼吸器外科専門医・評議員、がん治療認定医、内視鏡外科技術認定医

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