- 発行日 :
- 自治体名 : 山梨県北杜市
- 広報紙名 : 広報ほくと 令和7年8月号
今月はしおかわ福寿の里からのお知らせです
■「傾聴力」
しおかわ福寿の里 須田利樹
以前、TVでドイツの若者の団体が武田信玄公を敬愛し、来日した番組を目にした。山梨県民の習性で信玄公のネタ番組は真剣に見てしまう。番組の中で信玄公の魅力を質問され、「身分の上下にかかわらず、人の話に耳を傾け、良い案であればすぐに採用する。」と答えていた。
山梨県民なら釈迦に説法だが、信玄公は、人を大切にして、有能な人材を適材適所に配置して政治を行った。
信玄公が人物評価の際のエピソードとして、「私が若者と話をすると、三通りの反応を示す。」と信玄は言う。
一つ目は、ポカンと口を開けて私の話に呑み込まれているタイプ。二つ目は、私の喉(のど)あたりをじっと見つめていて、分かっているのか分かっていないのかはっきりしないタイプ。三つ目は、私が話している間じゅう、いちいち相槌を打ったり笑顔を見せたりするタイプ。
信玄公はさらに話を続ける。
「一番目のポカンと口を開けて私の話に呑まれているのは、自分の判断がまったくつかないヤツだ」、「二番目の、喉のあたりをじっと見つめているのは、一見愚かそうに見えるが、実は私の言うことを一つ一つ噛みしめ、頭の中で反芻(はんすう)している」、「三番目の相槌を打ったり笑ったりする者は、いかにも話を理解していますよと言いたくて、そういう態度をとるのだ」。そして、どのタイプがいちばん有能な部下か?という問いに対しては、「二番目がいちばん頼もしいタイプ。私の話の内容をきちんと整理し、決して鵜呑みにはしない。分からないことがあったら、おそらく後で聞きに来るだろう」と答えている。このエピソードは信玄公の、人の話を聞く能力「傾聴力」を説明している。
「傾聴力」の歴史は、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズが1950年代にカウンセリングで「アクティブ・リスニング」を提唱したことに始まり、現在ビジネス分野など広い分野で大切とされている概念である。傾聴力の主な特徴は、
・共感的理解:相手の気持ちを理解し、共感すること
・無条件の肯定的関心:相手の話を否定せずに、ありのままに受け止めること
・自己一致:聴き手自身も自分に真摯な態度で相手に接すること
である。
はるか昔の戦国時代に信玄公は、相手の評価、自分の姿勢として「傾聴力」を実践していた事は感心してしまう。
医療、介護分野ではさらに突っ込んで、「うなずき」「あいづち」「繰り返し」をして、聴いている姿勢を示し、事柄的・感情的な表現を聞き取り、それを言い換えて返答し、長い話を簡単に要約して返答し、相手が自由に回答できるオープンクエスチョンを心がけなければならない。
時間が限られた中で、全てを行うことは至難の業であるが、近づく努力は必要である。
患者、要介護者に安心感を与え、信頼されるために、今後も「傾聴力」に気を付けて、少しでも敬愛する信玄公に近づきたいと思う。
最後に、「傾聴力」とかけて「花を使ったマジック」と、ときます。そのこころは、どちらも「話し込み(花仕込み)ます」。お後がよろしいようで。