- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県伊那市
- 広報紙名 : 市報いな 令和7年4月号
■Vol.38 守屋貞治の企画展
これまでに市内で見られる守屋貞治(もりやさだじ)の石仏(貞治仏(さだじぶつ))をいくつも見てきました。中には欠けてしまって補修してあるものもありましたが、多くは大変美しい状態を保っています。貞治仏は信仰の対象でありながら芸術作品でもあることを感じ取ってくださる方がまた一段と増えてきたのではないかと感じているところですが、もっと広くアピールしたいと考え、高遠町歴史博物館で貞治仏等の実物を集めた企画展「高遠石工守屋貞治の美意識」を開催しています。
展示のためにお借りしてきたのは、木曽町大泉寺の延命地蔵菩薩、諏訪市温泉寺の佉羅陀山地蔵菩薩、駒ヶ根市善福寺の延命地蔵菩薩、辰野町瑞光寺の鏡および鏡台など寺院等の屋内で保管されているものです。貞治ら高遠石工が願主に納めた後、願主の子孫に当たる方々の心遣いによって屋内保存されることになったものばかり。さすがに屋内で保管されてきただけあって劣化が少なく、最近造ったかのような美しさを維持しています。特に大泉寺のものは肌の部分の艶(つや)やかさが群を抜いています。
かつて曽根原駿吉郎(そねはらしゅんきちろ)という研究者が著書『貞治の石仏』の中で貞治を「信と美の求道者」と評しました。貞治の旅日記の後ろのページには貞治の筆跡かどうか不明ではありますが「思案なぞめぐらし、色々と工夫をなし、誠に今日のお勤めのみばかり。」と記されています。恐らく貞治は稼ぐことよりも信仰の対象としての完成度の高さを求めており、願主の願いに寄り添って心を込めて造立したものと思われます。そして、造ってもらった願主もまた貞治の想いを受け取って大切にしてきたことが、残された石仏から伝わってきます。
皆さんも高遠町歴史博物館の企画展へ足を運んで貞治仏をじっくりご覧になってはいかがでしょうか。
問合せ:高遠町歴史博物館