くらし フィンランドに学ぶ、森とともにある暮らし

■伊那市とフィンランドの共通点
・豊かな森
・特色のある教育

▽なぜ、伊那市とフィンランド?
「世界で一番幸せな国」といわれるフィンランド。そんな国と伊那市の交流が始まったのは2019年のこと。豊かな森林を持つ伊那市と長野県は、フィンランドの中でも林業・木材産業の先進地域である北カレリア地域と、森林産業や木材利用の研究分野などで協力する覚書を締結。その後、教育分野にも幅を広げ、森と学びを軸とした連携を深めています。

▽自分軸を大切にする教育
森は「自分自身でいられる場所」。大人も子どもも森をこう表現していたのが印象的でした。幼少期には森にあるものを使って自由に遊びを生み出したり、図工の時間に作った鳥の巣箱を森に設置したり、遠足で訪れた森でたき火をしてサーモンを焼いたり、休日には家族や友達と森を歩いたり…。毎日の暮らしの中にある、自然の中で過ごす時間。そんな経験の積み重ねを背景に、森を心から敬い大切に思っている人たちに数多く出会いました。
先生も子どもたちも、おだやかで落ち着いた雰囲気の教室。人との比較や競争がなく、問われるのは「自分」。自分はどう考えるか、何をしたいのか、どこを目標とするのか、そのようなことを真摯に見つめる機会が多くある一方で、外で遊んだり、同級生と一緒に活動したりする時間を通して、人との関わりやコミュニケーションも大切にされていました。

長い冬が終わり、明るい陽射しと鳥の鳴き声が戻ってきた芽吹きの5月、市長や市職員、市議会、民間事業者らがフィンランドを訪れました。現地では2つの班に分かれ、教育班は、学校や保育園を訪問。子どもたちが自然の中で学ぶ様子や先生との関わりを見学しました。ビジネス班は、企業や大学を訪ね、環境に配慮した製品づくりや循環型社会のあり方、業種の垣根を越えた助け合いやアイデアのかけ合わせが起こる場の工夫についての理解を深めました。
現場の人と直接話すことで、なぜ今の形があるのか、その根底にある考え方に触れる機会となりました。

▽循環を大切にした、地球環境にやさしいものづくり
企業や研究機関の人々との出会いを通して感じられたのは、目的から目をそらすことなく、社会課題の解決に向け本当に意味のあることをやっていく姿勢でした。木の廃材から農業や土壌改良に使えるバイオ炭を作り出す企業、廃棄となった規格外のキノコを、発酵の力で風味調味料に変身させる企業など、フィンランドでは廃棄物を活用して価値あるものを生み出す製品開発が近年盛んです。
また、市役所と隣接している学校、高校の建物内にあり地域の人も使える食堂やホールなど、いろいろな世代や所属の人々がまざりあう場があることで、新しいアイデアや分野の枠を越えた助け合いが生まれる可能性が開かれていました。

▽フィンランドでの学びを伊那市らしく取り入れていくために
視察参加者がそれぞれの学びを市民の皆さんに伝え、対話を通して深める機会として、5月の視察訪問以降、全体報告会や数回にわたる教育班・ビジネス班それぞれの語る会を行ってきました。
これまでに、学校ではヨエンスーの小学校とのオンライン交流を通して、英語でのコミュニケーションや異文化交流などが始まっています。また市ミドリナ委員会では「たき火の日」や「森であそぼう」、フィンランドで見た学びのフォーラムなどが行われています。さらに、信州大学とヘルシンキ大学との地域間および大学間連携を深めるほか、他の大学機関との交流も進めていきます。そしてフィンランド大使館やVTT国立技術研究センターとのさらなる連携を強化し、今後、さまざまな産業分野に森の恵みを生かした取り組みへと広げ、市民の皆さんとともに「森とともにある暮らし」を育てていきます。
なお、地域の皆さんがフィンランドの文化や暮らしに出会う会「月1モイmoi」も毎月開催していますので、お気軽にご参加ください!

問合せ:地域創造課 地域ブランド推進係