文化 キラリ★中野のチカラ No.125

地域の未来を照らすみなさんを紹介します。

■書家 久保皐泉
くぼ・こうせん 中野市新井出身。10歳から書を習い、大学で専門的に学び、会社員を経て書家として独立。書道教室を主宰するほか、長野市の成人学校の講師としても活躍。旅館の看板や室名札、筆文字ロゴや商品パッケージなど、数多く手掛けている。

○書を未来へつなぐために、現代の私ができることを
「手を黒くして帰ってくる隣の家のお姉ちゃんを見て、楽しそうだなと思ったのがきっかけ。スイミングやピアノ、英語も習いましたが、書道が一番でした。」
10歳から書道を続けていた久保さんが書道に深く興味を持ったのは高校2年生。先生に書の道を勧められたが、初めは戸惑いの方が大きかったという。
「それまではあまり目立つ賞を取ることもなかったので、どうして私が?と。でも同じ頃に教室で出品した作品で大賞をいただいたり、少しずつ成果が出てくるように。手本をまねて、基本的な文字の書き方や筆致を学ぶ習字と、古典・古筆を手本とし、文字を素材として自己表現をしていく書道との違いに難しさも感じましたが、初めて知ることばかりの楽しさにどんどん惹き込まれていきました。」
書道の指導者が多い大学へ進み、かな書道の良師に出会う。日本で生まれたかな文字の美しさに触れ、それまで主としていた漢字からかなへ転向した。
「書の道に進むと決めたものの、将来への不安は大きかったです。他大学のサークルに所属し、同年代の書道専攻生の作品を見て、技量の差に衝撃を受けたりもしました。どうやって好きな書道を続け、仕事にしていくか…制作会社でデジタル技術や広報手段を身に付けるなど、今に至るまで時間はかかりましたが、模索しながら道を築いてきました。」
仕事をしながらでは書く時間が確保できず、深い学びから離れていた時期も。それでも独立を見据えて人脈を広げ、さまざまな縁が今につながっているという。
5年前からは書道教室を主宰。長野市の成人学校などでボールペン字講座の講師も務めている。第22回長野灯明まつりにおいて善光寺永代宿坊玉照院で開催した「書とあかり展」では生徒の作品も展示。
「室名札を揮毫(きごう)したことをきっかけに実現した展覧会は、表具師の北岡芳仙洞(きたおかほうせんどう)さん(中野市)と一緒に開き、普段触れることの少ない表具の世界も知っていただくことができました。高い技術力により、いつもイメージを形にしていただいています。」
作品を創る上では「和室が減り、書を見る機会も減っていますが、現代の暮らしの中でも身近に感じてほしいと思い、暮らしに溶け込む書を展開しています。書を楽しむきっかけに自分の作品がなれたらいいなと思っています。」
日本文化として書を残していきたいと話し「これからも書を続け、長い長い書の歴史の中で、自分も一つの点になれたら。そして、受け継がれる伝統文化を未来へとつなげていくために、先人たちへの敬意を持って、現代に生きる私ができることに挑み続けていきたいです。」