くらし 「輝く恵那人」241人目

■おいしいお酒を届けたい 杜氏としての経験を生かして
岩村醸造株式会社(岩村町)で、約14年「杜氏(とうじ)」を務める鈴木正人(まさと)さん。杜氏とは、酒蔵で働く職人(蔵人)であり、酒作りの責任者と言われる重要な役職。鈴木さんは蔵人らを取りまとめ、会社の要望を聞きながら酒を作っている。
鈴木さんは高等学校を卒業後、市外の電気系の会社などに就職。その頃偶然目にした冊子を読んで、初めて酒を作る蔵人という職業を知った。もともと酒が好きだった鈴木さんは、契約満了を目前としていたこともあり、蔵人をやってみようと決意。26歳の頃、武並町にあった、いとう鶴酒造株式会社に就職し、蔵人としてのキャリアをスタートさせた。
初めは、時間までに作業が終わらなかったり、言われた通りにできなかったりして厳しく指導されることもあった。しかし「酒作りが好き」という気持ちが強く、厳しい指導も苦にならず着実に技術を身に付けていった。
30代になると、技術を磨くために宮城県の酒蔵で働くようになった。その傍ら、一般社団法人南部杜氏協会が認定する杜氏資格を取得しようと、酒税法や醸造学の勉強や利き酒などの鍛錬を重ね、37歳の頃、見事杜氏資格を取得した。
41歳の頃には、現在勤めている岩村醸造株式会社が杜氏を探していると連絡を受け、恵那に戻り杜氏として働くことを決めた。「こうじの成長度合いの確認やもろみの分析などを行い、求める味にどれだけ近づけられるかが腕の見せどころ」と話す鈴木さん。毎年10月末から3月まで住み込みで働き、これまでの経験を生かしながら酒作りに向き合っている。
「お客様に喜んでもらうのが一番のやりがい。多くの人に日本酒のおいしさを知ってもらいたい。今後は酒作りの技術を後世に伝えられるよう指導も行っていく」と話す鈴木さんの表情は酒作りへの愛情にあふれている。

◆鈴木正人(まさと)さん(55歳)(長島町正家)
□プロフィル
長島町在住。岩村醸造株式会社で酒作りの責任者と言われる杜氏(とうじ)を務める。趣味は家庭菜園で、ナスやトマト、キュウリなどの夏野菜を育てている。他にも米作りや鮎漁を行うなど、幅広く活動している。