くらし シリーズ人権 みんなで考えよう。人が人らしく生きるために…

■小さな心遣いが生む幸せ
人権とは、私たちが生まれながらにしてもっている、人間として幸せに生きていく上での基本的な権利です。私たちは、幸せに暮らすために様々な願いをもって生活しています。その中で、私たちは自分の人権を大切にすると同時に、他者の人権を大切にしていかなければなりません。互いの存在を大切にし合うことで、誰もが幸せに生きていくことができるのではないでしょうか。今回は、誰もが幸せに生活していくために“小さな心遣い”をテーマに、人権について考えてみたいと思います。

◇小さな心遣い
私は、仕事に行く前の朝の時間にコンビニを利用しています。朝の時間帯は、忙しそうな様子でコンビニを利用している人がいます。そんな中、出入りするときに、入り口ですれ違った人がドアを押さえて入りやすくしてくれることがありました。ドアを押さえてもらった瞬間、感謝の気持ちとともに、心が温かくなったのを覚えています。私はコンビニから出るとき、利用する人が入りやすいように知らず知らずのうちに、ドアを押さえていました。これは、「自分と同じように忙しい中、気遣ってくれた」という嬉しさからの行動です。この誰かの小さな心遣いが、自分自身の心を温かくし、その温かさを別の誰かにつないでいるのだと思います。
また、道徳の教科書では「命のおにぎり」という題材として2014年2月に福島市で起こった記録的な大雪の影響で立ち往生している時のエピソードが教材となっています。東日本大震災で被災し、仮設住宅で暮らしていた福島県飯館村の住民が大雪のため立ち往生している車の列に気付きます。そして、震災の支援物資として届けられていたお米と持ち寄った具材でおにぎりを作り、止まっている車の運転手に手渡したという内容です。この教材の最後には、「おにぎりをもらった運転手がとても感謝していることを知った住民が、『私たちは、震災からこれまで数えきれないほど多くの人に助けられてきました。だから、恩返しができたようで嬉しいです。また、明日からがんばろうと思えました。私たちにとっても励みになりました。』とインタビューに答えています。そして、その新聞記事を見た広島の人々が、この話をもとに紙芝居を作り、全国各地で上映されています。」と締めくくられています。

◇心遣いの連鎖
この2つのエピソードは、相手の気持ちを推しはかり、思いやる心が受け取る側の温かい気持ちへとつながっています。そして、共通しているのは、相手の立場に立って考えるという行動です。他者を気にかける言葉や行動は、“ありがとうの一雫(ひとしずく)”となります。
思い返してみると、私の嬉しさからの行動も、「すれ違っただけかもしれない誰かが自分に対して配慮してくれた」という“ありがとうの一雫”が他者へとつながっています。そして、「命のおにぎり」での、インタビューにあるように、誰かに助けてもらったという“ありがとうの一雫”は、他者だけではなく、「次は、自分が周りの人を助けたい」という気持ちを育んでいます。それは、自身の喜びや充実感となり、自分自身にも影響を与えているのです。こうした“心遣いの連鎖”は、私たちが送る日常生活を送る上で心の安定を生み、安心できる土台となっていきます。

◇ありがとうの一雫が生む幸せ
人権という言葉を思い浮べると、大きな制度や運動など少し難しく考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、実際は他者を思う“心遣いの連鎖”が社会全体に安心という土台を形づくります。そして、その安心の土台が家庭や地域の中に広がっていくことで、人権が自然と守られる社会が実現するのではないでしょうか。相手の立場に立った“ありがとうの一雫”は、新たな思いやりを生み、また誰かの心を温かくする“心遣いの連鎖”となり、社会全体の“幸せ”となっていくのだと思います。
あなたのその小さな心遣いによって生まれる誰かの“幸せ”はあなたの“幸せ”にもつながっていくのです。