- 発行日 :
- 自治体名 : 静岡県島田市
- 広報紙名 : 広報しまだ 2025年4月号
■愛着ある地元のため、チャレンジを続ける若き奇術師(マジシャン)
NPO法人驚かせないマジックショー 副理事長
仲野翔夢(なかのとむ)さん(神座)
現在20歳で、大学3年生の仲野さんは「NPO法人驚かせないマジックショー」を運営しています。マジックを通して、幅広い世代に認知症の啓発活動を行っています。
▽プロからの思いがけない言葉
現在の活動の始まりは、1人のマジシャンとの出会いから。幼い頃の夢が叶った瞬間を振り返ります。
「プロマジシャンのマギー塁(るい)さんが、川根で開催する『おしゃべりマジックカフェ』。大好きなマギー一門の芸が市内で見られると、新聞記事で知ったときは驚きました。次の回から早速参加して、観覧後にはドキドキしながらマギー塁さんと話をしてみました。マジックへの思いを話したところ、思いがけず『一緒にやってみよう』と誘ってもらい、現在の活動が始まりました」
▽認知症を啓発する意義
マギー塁氏と出会い、活動を共にすることで、認知症啓発の大切さに気づかされたと仲野さんは話します。
「初めて同行してみると、同じ芸を何度もやったりタネ明かしをしたりと、マジックの定石と異なるやり方に驚きました。そのような中、迎えた2回目は、偶然にも曽祖母が入所する特別養護老人ホームが会場でした。楽しみにした久々の再会。曾祖母に話し掛けてみると、私が誰か分からず『初めて会った』と言われました。認知機能の低下で、父の名前を伝えてやっと分かるほど。それが衝撃的で、同時に認知症の恐ろしさを実感しました。言葉で知っていても、当事者でなければ他人事なんですよね。だからこそ、幅広い世代に周知するとともに、予防に取り組んで欲しいとの願いから、マギー塁さんと一緒に、驚かせないマジックショーを立ち上げました」
▽このまちのためにできること
「当初は王道のマジックを披露していましたが、今は現在のスタイルの方が、いいなと思っています。何度もやるとお客さんはタネを見破ろうと頭を使い、最後のタネ明かしでは笑いが起こります。参加者から『これは脳トレになるね』とうれしい言葉も掛けてもらいました。
活動を通しておじいちゃん・おばあちゃんと話しをすると、喜んでくれるのでうれしいですね。そのような交流を通して、日々島田の良さを感じる中で、他にできることはないかと思い、3月から神座地区で「オレンジストリートプロジェクト」を始動させました。認知症に優しいまちを目指し、普及啓発に賛同していただいたお店などにステッカーを貼ってもらっています。学生で時間のある今がチャンス。できることにこれからも、どんどん取り組んでいきたいですね」
社会問題に、若い力で立ち向かう仲野さん。「驚かせない」マジックで、生まれた笑顔の数だけ悩める人を減らし、認知症を予防する強い思いを市内に広げていきます。