くらし 島田人 Shimadajin File #159

■生きづらさを抱えて孤立しがちな子ども、保護者、障害者、高齢者などが、安心して過ごせる居場所をつくりたい
みんなでつくる河原町の居場所 代表
待井尚世(まちいなおよ)さん(河原町)

重度知的障害の子を育てる待井さん。空き家を修繕して、昨年地域の居場所を開所しました。落ち着く地域のよりどころとして、たくさんの笑顔が生まれています。

▽予想外の人とのつながり
令和4年12月から、開所に向けて準備を始めました。地域の活動に参加して、知り合った協力者のおかげで、トントン拍子に進んでいったといいます。
「『街道にぎやかし隊』という団体の会合の中で『困っている当事者のための居場所づくりをしたい』と相談したところ、この空き家を紹介していただきました。何もかも前例のないことだったので、運営や資金面で不安だらけ。活動に賛同してくれた仲間や地域の人たちの協力を得て『失敗してもいいからまずはやってみよう』という気持ちになれました。家主さんからも、多大なるご理解をいただきました。片付けから掃除、DIYまで当事者や支援者が、自らの手で整えた居場所です」

▽利用者同士がつくる居場所
類似団体の運営方法を学び、場所貸しを行っています。困っている人それぞれに寄り添う居場所を目指します。
「一般開放日・いど場(ば)た(当事者のためのしゃべり場)・DIYチャレンジDAYという運営部が行う活動(昨年度計46日実施。年間269人が参加)の他、空いた時間帯にはさまざまな団体が活用しています。その内容は、障害のある子と親の居場所、心と体を整えるストレッチ教室など。ホッとできる・笑顔になれる活動に、自然と人が集いました。『みんなでつくる』居場所として心のよりどころになればと、団体名にはそんな思いが込められています」

▽身近にいる当事者たち
「障害や不登校などの生きづらさを抱えた子どもを育てる家庭では、予測できないことが毎日のように起こります。それにより疲弊する親も多くいます。困りごとを話したり、情報交換したりすることで気持ちが軽くなる、そんな居場所がここです。当事者同士の頑張りをいたわり、励まし合える。私たちは辛い中に居ても笑い合いたいし、仲間が笑顔でいてほしいと思います。
当事者でない人には、私たちの現実を知るだけでもいいんです。障害のある子はこだわりが強い、大声を出す、音に敏感など挙げたらきりが無いですが、今日を逞(たくま)しく生きています。このリアルを知ることで人は優しくなれると思いますし、障害などを抱えている人は身近にいるかもしれません。また、当事者になることだってあります。お互いさまの気持ちで寄り添える仲間の輪が、広がっていくことを期待しています」
温かい居場所づくりを目指す待井さん。自身の経験や人とのつながりが、地域に安心と笑顔をもたらします。