- 発行日 :
- 自治体名 : 静岡県島田市
- 広報紙名 : 広報しまだ 2025年10月号
■3億分の1 卵子と精子が出合い、受精に至る確率
生命の誕生は、3億分の1の奇跡。「命を大切に」と学校で教わったが、自分の体のことや生理現象、人間関係の作り方を明確に学んだことがない大人が多いのではないだろうか。社会が変化する中、子どもも大人も知識を更新する必要が求められる。親、学校、地域それぞれの役割がある。
■生きているだけで100点満点!アイラブミーを伝えたい
「en(えん)」代表(助産師、性教育アドバイザー)
高野(たかの)しのぶさん(神奈川県横浜市)
・プロフィール
病院勤務時に、未成年の妊娠・望まない出産・性被害・性感染症などの処置を経験。子どもたちと接する中で無知であることが辛い経験をさせていると思い、2019年から性教育出張講座を始める。講演依頼の増加とともに独立し、今年度までに5万7000人に講演。子どもたちの相談を受ける場、支援する場として子ども食堂「しのぶ食堂」も運営している。
▽性教育が必要な背景とは?
学習指導の規定では性に関することを教えるのに、制限がかけられています。子どもたちは、ネットなどで知識を得てしまい、時に誤った情報であってもそれを誰も修正できない環境にいます。また海外の授業数に比べ、日本が性教育にかける時間は圧倒的に短い。先生たちは教えたいと思っていても時間が足りない状況です。社会の中では性的なものがあふれており、寝た子を起こすのではなく、勝手に起きる環境が日本にはあるのではないでしょうか。性の問題に巻き込まれた時、子どもが責められることが多いです。その問題が起きるのは教えていない社会の責任だと、私は感じています。
▽実際に起きている問題とは?
性被害の8割は顔見知りで、性被害を被害だと思っていない子が多いです。成長の中で、自分の体のことさえ十分に教わらず、その変化を前向きに捉えられない不安を感じています。親も子も性の話は、家族と恥ずかしくてできない、と線引きしてしまうと、子どもたちは不安を解決するためにネットを利用します。小学生でもアダルトコンテンツに触れるケースがあり、フィルタリング機能をかいくぐることもあるそうです。有害な情報を完全に遮断することは難しいため、親も子も情報を見極める力を育てることが重要です。
▽これから大切なことは?
子どもたちが自分で理解し、選択して行動できる力を身につけてほしいです。そのためには周りにいる大人が、正しい知識を伝えるサポートをすることが大切です。私が学校で性教育を行う際は、保護者向け、教員向けも提案して実施しています。大人でも性教育は恥ずかしいと感じている方がいるので、大人の意識改革も心がけています。
性教育の基本は自分を大切にすること。それを理解できれば他者との境界線が分かり、互いに尊重できると思います。
■市内の小中学校での性に関する取り組み
※各学校によって、内容などは異なります。
●適切な年齢に適切な内容を。保健指導や授業などさまざまな場で学習
▽小学校
小学校養護教諭 山崎貴実子(やまざききみこ)さん
性に関する指導は小さい頃からの積み重ねが大切だと考えています。小学1年生から義務教育の9年間を通して体や心のことを学びます。プライベートゾーンを知ること、自分の誕生について考えること、性別問わずに一緒に楽しく学校生活を送ること、性の多様性のことなど。4年生の保健領域「体の成長とわたし」では、第二次性徴について男女一緒に学習しています。また、生命誕生の神秘と命の大切さを考えるため、毎年市立総合医療センターの助産師を迎え、6年生に思春期講座を開催しています。
▽中学校
金谷中学校では、思春期の心身の変化や交際、デートDV、性行為で起こり得ることなど外部講師を招いて授業を行っています。心身が大きく成長する時期だからこそ、生徒は自分事として真剣に学んでいます。さらに個別指導が必要な生徒には、深い内容を伝えます。義務教育を終えると、自分で考え選択しなければいけません。正しい知識を持っていることは、自分や相手、大切な人を守ることにつながります。
■高野さんが教えるカラダのこと
▽月経と専門用語
・50歳まで続く生理と上手に付き合おう
・ナプキンだけでなく月経カップやタンポンもあるよ。自分のライフスタイルに合うものを使おう。旅行や部活などと重なるのが嫌な時は、内服薬で時期をずらすことができるよ
・初めの頃の生理は不規則。心配しなくても大丈夫。2年以上経っても不規則なら産婦人科を受診してね。周期はアプリなどでチェックしよう。自分の健康管理の一つだよ
▽人工妊娠中絶(望まない妊娠が分かった場合)
・中絶は22週未満までしかできないよ。11週までは麻酔で処置、12週以降は分娩に近い方法だから肉体的・精神的にも負担が大きい。だから11週までに病院に行ってほしい
▽避妊具の失敗
・コンドームは失敗することがある。正しい使い方を知って、失敗した時は72時間以内に緊急避妊薬(アフターピル)を服用しよう
▽自慰行為
・男女とも性器に強い力を与えない。清潔にして、誰もいない自分だけの空間であれば、してはいけないことではないんだよ。男の子は、ゆで卵やみかんが潰れない程度の力加減で
